新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

個人のインバウンドマネーはどう動くか

今回もバブルが崩壊すれば、ほぼ同様な事態が発生するでしょう。それまで六本木を意気軒昂に闊歩していた人たちが、行きつけのバーやクラブからその姿を消していくことでしょう。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

そして駐在していた外国人幹部は「また会う日まで」と言って、母国にご帰還あそばされるということです。いつの時代でも外資系ファンド会社や投資銀行、証券会社に勤める日本人社員は若くても高給取りで、女性にもてると聞きますが、彼らの寿命は意外と短いのです。

 

それでも、理由はどうあれ「宴の終わり」をドライにとらえ、組織を解散し、来るべき日に備えるのがインバウンドマネーです。

 

もうお気づきだと思いますが、そう、彼らインバウンドマネーには「帰る」場所があるのです。日本企業だって海外事業で失敗した時には、まっさきに現地法人を畳んですたこらサッサと日本に帰るではありませんか。そのとき現地採用の人の面倒を見るような奇特な企業はないのです。

 

ついでに言えば、六本木のお店も何も心配はありません。しばらくお店は閑古鳥が鳴くかもしれませんが、また新たな種族の成金たちに「入れ替わる」だけなのですから。

 

今回のバブルでさらに特徴的なのは、個人のインバウンドマネーの存在です。このマネーは、湾岸エリアのタワマンのみならずニセコや白馬などのリゾート地にも幅広く浸透しています。もう少し庶民的なインバウンドマネーは都心部のアパートなどにも投資をしています。

 

このマネーには大きくいって2種類があるようです。一つが、東京五輪開催などによる不動産の値上がり益を見込んで純粋に投資として判断して日本にやってきたもの。そしてもう一つが、中長期的に日本の不動産を投資ポートフォリオの一つとして組み込んでおこうという目論見を持ったマネーです。

 

実は、前者のマネーは2016年頃から日本から引き揚げ始めています。湾岸エリアの不動産仲介会社によれば、このエリアの中古物件は「買い」よりも「売り」が優勢になっていて、すでにアービトラージ(鞘取り)をとっていったん「手じまい」をしている人が多いそうです。株式市場と理屈は同じです。皆が一斉に「売り」に入る東京五輪開催前後ではなく、少し早めに利益確定を行なうこと、これは投資の鉄則です。

 

次ページ「マンションがスラム化」は絵空事ではない
不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

牧野 知弘

祥伝社新書

不動産が高騰し続けている。 銀座の地価は1980年代のバブル期を上回り、三大都市圏と「札仙広福」(札幌・仙台・広島・福岡)の上昇が著しい。国内外の投資マネーの流入、外国人富裕層の購入を背景に、超大型ビルや再開発の計画…

不動産激変 コロナが変えた日本社会

不動産激変 コロナが変えた日本社会

牧野 知弘

祥伝社新書

新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は大激変している。「不動産のプロ」であり、長く現場の動向を観察してきた著者は、そう断言する。いったい、何が変わるのか?たとえば、従来社員一人当たり三坪で計算されて…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録