これからシニアライフを楽しもうという段になって、後妻が突然死。実子がないため、後妻のきょうだいが相続にかかわり大事に…。面倒事に懲りた夫が懸念するのは、失踪したままの長男のことでした。自分にもしものことがあったら、同居の次男家族に面倒が及ぶ可能性が高いためです。一体どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

 

「息子たちを一生懸命育ててくれた妻には実子がなくて。相続の際、妻のきょうだいが絡んできて、本当に大変でした。夫婦の財産は、僕たち夫婦だけで築いたものなんですよ。それなのに、親しくもない義理のきょうだいに頭を下げなければならないし。本当に懲り懲りです」

 

 

「長男は些細な行き違いから家を飛び出して、それっきり音沙汰がありません。僕もかなり探し回ったのですが、結局、居場所はわかりませんでした。いま一緒に暮らしている次男に面倒が及ばないよう、本当ならいい加減、失踪宣告をすべきなのかもしれません。でも、いつか帰ってくるかもしれないと思うと…。長男のことを、どうしても諦められないのです」

 

筆者はK泉さんが懸念している相続の問題について、いざというときになって、次男が長男を捜したり、家庭裁判所で手続きを行わなくてもいいように、公正証書遺言を作成することをお勧めしました。遺言に「不動産は次男に相続させる」と記述しておけば、次男はこれまで通り、自宅で生活を送ることができます。この遺言内容については、三男も快諾しています。

 

「父が〈不動産は次男に遺す〉という遺言を書いてくれたおかげで、相続の際も手続きに困らなくすみます。兄の件は本当に心配ですが、住む場所の心配がなくなったことは、正直とても助かります」

 

「子どもたちもまだ小学校ですし、万一の際に生活が変わったらと思うと不安でした。でも義父のおかげでこの場所にずっと暮らせることになり、安堵しました」

 

次男夫婦もホッとしたようでした。

 

「長兄のことはいつも心に引っかかっていますが、父もどんどん年を取っていきます。そばに暮らしてくれる次兄がいれば僕たちも心強いです。父の老後を見てくれるのだから、財産が次兄に行くことにまったく不満はありません」

 

三男夫婦も父親の決断に納得している様子です。

次ページ次男一家の住む場所は安泰に

本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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