新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

建物は築20年を超えると大規模修繕が必要に

2013年11月に施行された「建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律(改正耐震改修促進法)」では、前述の施設のうち一定規模以上の建物については、耐震改修を行なうことを義務づけ、これに従わない場合にはその施設名称を公表するように規定されました。とりわけお客様をおもてなしするホテルや旅館ではこの影響は大きく、改修をあきらめて廃業を選択する施設まで現われています。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

耐震改修にあたっては一定の補助金も得られるので「飴と鞭」の施策ともいえますが、業界に与えた影響は甚大なものでした。

 

一方で、耐震基準の改正後すでに40年近くの時間が経過しています。通常建物は築20年を超えると大規模修繕が必要になります。また、管理状態のよくない建物になると築30年を超える頃から建物の劣化が目立つようになってきます。

 

すでに「平成」に元号が変わって30年が経過。「平成築」の建物で新耐震基準に適合しているからといって、無条件に「大丈夫」だとの診断もできなくなってきています。特に平成初期はいわゆる平成バブル時代ともいわれ、非常に多くのオフィスビルやマンション、商業施設などが建設されました。

 

これらの建物が軒並み築30年を超えてくるのがこれからなのです。

 

また、マンションのなかでもタワマンと呼ばれる超高層マンションで築30年超えとなる建物が出てきます。修繕維持積立金が潤沢にあるとされるマンションでも、超高層建物の大規模修繕はまだほとんど事例がない中での工事を強いられることとなります。必要にして十分な改修には意外と大きなコスト負担となる可能性もあります。

 

今後は築古物件の中でも、良好な管理状態の建物とそうでない建物との格差が大いについてくるものと思われます。ましてや築30年超の物件は世の中ではこれから激増してきます。

 

建物における「優勝劣敗」は、そのまま運用での大きな収益格差につながります。

 

今回の不動産バブルによる不動産の大量供給は、こうした築古物件における格差をさらに拡大させることにつながるのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

不動産で知る日本のこれから

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