築古は「新耐震設計基準」以前の建物
築古とは読んで字のごとく「築年が古い」、つまり建物の竣工年が古いということ ですが、どのくらいの年数をもって「築古」と呼ぶのでしょうか。
日本の場合、まずわかりやすい分水嶺があります。耐震基準です。日本は地震が多い国ですので、建物は一定の揺れに対しても耐えることができる構造である必要があります。この構造の基準が耐震基準というものです。
法律上最初に耐震基準が定められたのは、関東大震災の翌年である1942年といわれていますが、基準はその後に生じた度重なる地震の発生を経て改正され、現在採用されている建物の耐震基準は1981年に施行された「新耐震設計基準」です。
実際には1981年6月以降に建築許可が下りた建物から採用されていますので、建物の竣工年では判断はできませんが、おおむね1983年以降竣工の建物であればほとんどがいわゆる「新耐震基準」といって差しつかえないかと思います。
現在、この新耐震基準は不動産を選択する上での大きな判断材料となっています。投資家などから資金を募って不動産に投資を行なう、不動産ファンドやREIT(不動産投資信託)は、基本的には「旧耐震基準」で建設された不動産は取得しない方針のところが多いようです。
また、オフィスビルのテナントでも、最近では旧耐震のビルには入居しないところが増えてきました。とりわけ2011年3月に発生した東日本大震災以降は、地震に対するリスク感度が大幅に向上していて、ビルを選択する際に真っ先に挙がる条件の一つになっています。
この影響で、旧耐震ビルでは、周囲の新耐震基準のビルに比べて低廉な賃料を提示せざるをえず、オフィス市場では競合上の大きなディスアドバンテッジになっています。
この影響はオフィスビルだけではなく、病院、店舗、ホテルや旅館といった不特定多数の人が利用する施設や、老人ホーム、学校など避難に配慮を必要とする施設にも及んでいます。