新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

「有事」に不動産価格は耐えられるか

ところが一度こうした「有事」が勃発すれば、日本の不動産に向かっていた資金が 一気に引き戻される可能性は小さくはありません。不動産価格がそうした「有事」に耐性があるとは、とても思えないからです。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

また「有事」は世界での出来事だけではありません。南海トラフ地震のように、いつなんどき発生するかもわからないような自然災害もあれば、経済情勢の変化で平成バブル崩壊時に生じたような大企業の倒産が随所で発生するリスクもあります。

 

大企業だから安心、なんていったい誰が思いついたセリフでしょうか。とりわけ金融資本主義が猛威を振るう現代資本主義では、多くの大企業が自前による地道な成長だけを目指すのではなく、M&Aを梃子にした企業規模の膨張をひたすら追い求めるようになっています。

 

そしてその原資は市場で渦巻くマネーなのです。このマネーの流れが変わることは、大企業とてその変化に対応できなくなる危険性を孕んでいるのです。ここ数年でも東芝の事件で見られるように、無謀なM&Aが会社全体を窮地に追い込む事例は、枚挙に暇がありません。

 

人生にも「有事」はいっぱい潜んでいます。急な病気、事故、そして離婚など、これらのすべてを保険で賄えるわけでもありません。

 

リスクばかりを考えては何事もできないのも確かですが、少なくとも今後もまったくリスクなく「平穏」が続くとは考えないほうがよさそうです。むしろ平穏の時代が長く続きすぎたと考えるほうが、歴史的には正しい判断かもしれません。リスクを「どこまでとれるか」、これからの不動産で試される概念です。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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