新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

2022年、生産緑地制度の期限問題

2020年以降の日本の、とりわけ大都市近郊の不動産価値に大きな影響を及ぼしそうな時限爆弾が存在します。この爆弾がへたをすると2022年には爆発するという物騒な話となっているのです。

 

生産緑地法という法律をご存じでしょうか。 

 

首都圏の郊外に広大な「生産緑地」が眠る。(※写真はイメージです/PIXTA)
首都圏の郊外に広大な「生産緑地」が眠る。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

生産緑地法とは、1974年に、大都市圏の一部の市街化区域内における農地の宅地化を推進するために公布された法律です。この法によると、指定された区域内にある農地に「宅地並み」の固定資産税を課すことで都市部に残る農地を宅地化しようと考えられたものでした。当時は都市部に押し寄せる人々の受け皿として住宅用地が圧倒的に不足していた時代です。住宅用地をひねり出すために市街化区域内の農地を拠出させようというのが、法制定の本来の目的でした。

 

ところが、これに猛反発したのがこのエリアで多くの土地を持つ地主たちでした。彼らの多くは自分たちの財産である土地を守るためには「農地」という聖域を主張し、これを維持する必要がありました。そこで、区域内においてもまじめに農業をやろうとする住民に配慮して、91年3月に生産緑地法は改正になり、92年度より、改正法の下で生産緑地制度が導入されることになりました。

 

この制度は自治体に申請された農地で、敷地面積が500㎡以上で期間中は営農に専念するなどの一定条件を満たせば、30年間にわたって固定資産税は農地扱いとし、相続税については納税猶予を受けることも可能とするものでした。

 

対象となったのは、東京23区、首都圏、近畿圏、中部圏内の政令指定都市、その他 整備法で規定された一部の地域です。

 

当時私は、三井不動産で地主さんたちの相続対策を立案する仕事をしていましたが、都市部の優良な土地を地主さんに生産緑地とされてしまうと、活用の提案もできなければ、マンションや戸建て用地として仕入れもできないということで、この制度の創設には落胆もし、憤慨もしたものでした。

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不動産で知る日本のこれから

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