新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

低金利が20年続く日本だけの「異常事態」

現状はデフレ時代なので担保にとる住宅や不動産価格が値上がりする可能性は小さいものの、銀行の調達レートも非常に低い水準にあるので、そのレートに銀行の利益分を乗せても、消費者には「安い」金利が提供できているにすぎません。

 

銀行にとって、これまで住宅ローンは美味しい商品でした。長期にわたって借りてくれること、住宅を担保として確保できること、返済原資はサラリーマンなどの勤労所得から返済されることなど、銀行にとってもありがたい商品だったのです。

マイナス金利政策が採用される中、資金の貸出先に悩む銀行は、住宅ローンや消費ローンに活路を見出そうとしてきましたが、当然ですが競合が激化するにつれ、低金利競争に陥り、ローンにおける利益率を押し下げ、今までのような美味しい商品ではなくなりつつあるのが現状です。

 

加えてこの世界的な低金利時代もそろそろ終焉が近づいているようで、2018年はすでに米国FRB(連邦準備制度理事会)は数度にわたる利上げの意思を表明しています。米国や欧州に利上げの動きが強まれば、日本だけが「低金利、お金じゃぶじゃぶ」の惰眠をむさぼるわけにはいかなくなります。

 

金利は上下動するものなのです。そして今のような低金利が日本のように20年程度も続いているのは、歴史的に見ても「異常」な状態にあるといってよいのです。その異常な状態が「常態」と思い込んでしまうことに、リスクが隠されています。

 

「有事」についても同じことがいえます。最近の日本では「有事」といえば朝鮮半島のことしか頭にはないようですが、現代は、世界中のどこで起こるともわからない「有事」が一気に世界経済の風向きを変える可能性が、増しています。

 

2008年に生じたいわゆる「リーマン・ショック」は、当時多くの識者から「対岸の火事」だと論評されていました。日本だけがそうした有事とは無縁で過ごせるとハナから信じていたのです。 

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不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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