新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

東京ドーム1675個分の土地が首都圏郊外に眠る

現在この生産緑地として登録されている面積は、どのくらいあるのでしょうか。国土交通省「都市計画現況調査」(平成26年)によれば、2014年3月末現在で1万3653ha。このうち首都圏(1都3県)で57%にあたる7747haが該当することとなります。わかりやすくいえば、東京ドーム(約4.7ha)1657個分という広大な面積の土地が、生産緑地として首都圏郊外部に眠っていることになるのです。

 

生産緑地制度導入時は「あと30年も土地は出てこないのか」と嘆息したものでしたが、時は経つものです。これら生産緑地の約8割がなんと2022年に期間満了を迎えることになるのです。

 

これまでは農業専門に働いてきた人たちも生産緑地にしてすでに30年が経てば、事業承継や相続の時期に差しかかります。2022年を契機に大量の都市農地が、生産緑地の解除を申請してくることが予想されます。

 

具体的には、30年を経過した生産緑地を解除する場合には、地元市町村に対して「買い取り申請」を行ない、時価で買い取ってもらうのが原則です。しかし、財政難にあえぐ自治体が多い中、生産緑地を買い取ることができる裕福なところはほとんどありません。

 

そこで自治体では他に生産緑地として買い取る人がいないか斡旋しますが、該当者がいなければ、申請者の土地には宅地並みの課税が施こされることになってしまいます。多くのオーナーは土地を有効活用するか、または売却しなければ、膨大な「宅地並み」の固定資産税を負担することは困難です。

 

2022年以降、都市部において生産緑地が大量に不動産市場に登場するということは、当然地価下落圧力が強まることが想像されます。また、宅地並みの固定資産税を賄うために、アパートなどを建設して土地の有効利用を図る地主も増加することが予測されます。

 

政府ではこうした事態に備えて、生産緑地制度については10年ごとの期限延長を認める特定生産緑地制度の創設、面積要件の緩和、また制度に登録した農地を家庭菜園などで利用することの許可、農業法人に貸地として活用することの許可など、さまざまな「激変緩和措置」を採用し始めています。

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不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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