5年後には赤字転落することが契約時点で確定していた
おそらくは、5年後の更新では10%くらい家賃を下げないと借り手が付かないでしょう。そしてもしスマートデイズが経営を続けていれば、間違いなく10%以上の家賃減額を求めてきたはずです。
では、5年後の収支は果たしてどうなるか。サブリース収入が10%減るとすると110万円になり、管理費がその7%として、月約8万円。手取りの収入は月102万円まで下がります。金融機関への支払いは月100万円で、キャッシュフローは月に2万円、年間24万円まで落ち込むことになります。そこから固定資産税50万円をマイナスすると、年間26万円の赤字が発生することになります。
つまり、Aさんがこの物件を購入した時点で、5年後に赤字転落するのは決まっていたと見ることができます。
仮にスマートデイズが営業を続けていたとして、Aさんに残された手段としては、5年経った時点で物件を売却することです。もし物件の価値が本当に高ければ、購入した値段からそこまで乖離(かいり)せずに売れる可能性もありますが、Aさんの購入した物件はそうはいきませんでした。
スルガスキームを用いて建てられた「かぼちゃの馬車」の建築費や土地代は、市場価格のほぼ倍額という高値で投資家に販売されていました。加えて、立地の問題や狭さが際立っていたこともあり、市場で売却しようとしてもせいぜい買値の50%つけばいい方である、という状況でした。仮にその条件だと、販売価格は1億500万円。購入後5年間で積み上げた利益は530万円、銀行に支払った返済総額は6000万円ですが、それを差し引いても3970万円の赤字ということになります。
そこで損切できる経済状況であれば、これでも傷口は最小限であったといえます。売却後のローン返済の原資が用意できないようなら、その後の赤字が分かっていても、所有し続けるしかありません。
さらにAさんは、この事件と関連した詐欺事件にまで巻き込まれていました。
問題が発覚し、約束されていた家賃収入が途絶えてから、Aさんのもとに「かぼちゃの馬車被害者救済」を語るダイレクトメールが届きました。