通帳改ざん、二重契約書…被害金総額は1000億円
このような証拠を元に、弁護団はスマートデイズなどによる与信資料の偽造にスルガ銀行が組織的に関与していたとし、「スルガ銀行の融資が違法行為の上で行われていたなら融資自体が認められない」と主張しています。また、弁護団は4~5月、スルガ銀行との交渉を通じて59人分の融資資料の開示を受け、少なくとも34人分で、給与所得や預金残高の水増しを確認したそうです。
こういった動きを受けて、スルガ銀行側はどう対応したのか。2018年5月15日、スルガ銀行の米山明広社長は、関連融資に関する内部調査の概要をメディアに向けて発表しました。
それによると、融資残高はスマートデイズ以外も含めて1258人分、2035億円にものぼり、審査を通りやすくするための通帳改ざんや、過剰融資を引き出すために売買代金を水増しした二重契約書が作られていたことも事実と認めました。米山社長は「相当数の社員が認識していた可能性がある」「連続増収増益がプレッシャーに変わり、審査より営業が強くなってしまった」と述べており、なかには営業部門の幹部が審査担当者を恫喝(どうかつ)する例まであったといいます。
ただしこの時点では、誰が不正を主導したのかという核心は、すべて第三者委員会の調査に委ねられました。4月から金融庁が立ち入り検査に入っていますが、そうした調査結果は現在のところ発表されてはいません。
スマートデイズの急成長は、スルガ銀行があってこそのものです。シェアハウスという利用形態では、他の銀行は融資をしませんでした。スルガ銀行だけが、普通のサラリーマンに対して、1億円を超える物件を何棟も融資したのです。
書類の改ざんがなければお金を借りないで済んだ人、貸してもらえなかった人もたくさんいますから、返せない借金を負わされたという意味では被害者です。スマートデイズの破産で損失を被ったオーナーの被害金総額は1000億円を超えるともいわれる規模になっており、スルガ銀行の責任は甚大であるといえます。