新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

全国各地にニュータウン建設が加速

しかし日本経済はこうした苦難を次々に克服し、飛躍的な成長を遂げていきます。

 

『Japan as №1』(エズラ・ヴォーゲル著)という書籍が持て囃され、世界第2位のGDPを実現し、日本がその自信を大いに深めていった時代でした。

 

牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)
牧野知弘著『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)

一方、地方から都会へ大量に流入する人々の隊列はこの時代も続き、大挙してやってきた勤労者たちは都心から郊外に延びる鉄道沿線にマイホームを求めました。住宅は値上がりを続け、国民全員が「早く家を持たなければ一生持てなくなる」と、本当に信じた時代でした。

 

国が全国各地にニュータウンの建設を加速させたのも、この時代です。とりわけ1970年代は全国各地の丘陵が造成され、その結果、全国に2009カ所、面積にして18.9万haの住宅用地が誕生しました。

 

不動産神話あるいはマイホーム神話というのは、この時代に形成された考え方です。詳しくは拙著『こんな街に「家」を買ってはいけない』(角川新書)を参考にしていただければと思います。

 

いずれにしてもこの時代は、不動産価値が人口の増加と経済の驚異的な成長に後押しされて上昇し続けていく時代でした。そうした意味では、「実に単純な」論理の下で不動産は捉えられていたのです。

 

今では冗談のような話ですが、1974年当時の厚生省の(現・厚生労働省)人口問題審議会が人口白書において「日本は出生抑制に努力すること」の旨を打ち出していました。この年は前年にオイルショックが勃発し、資源と人口に関する危機意識が高かったことが背景にあります。同年開催された日本人口会議では「子供は二人まで」という、今の政府が聞いたら卒倒するような大会宣言が採択されています。

 

では、日本がその絶頂時代を迎えていた1990年代半ば以降、日本はどんな道をたどっていくことになるのでしょうか。

 

牧野 知弘

オラガ総研 代表取締役

 

不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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牧野 知弘

祥伝社新書

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