新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

パワーカップルはタワマンで6500万円のローンを組む

私の知り合いの都内の銀行支店長の話。

 

「いやあ、最近の若い方、すごいですよ。タワーマンション買いたい、とおっしゃって夫婦で6000万円、7000万円といった住宅ローンを組むのですよ。家を買いたい、という気持ちが強いのですよね。もちろん、融資の審査は通過しているので、ローンはお出しできるのですが、いやあ、驚きです。個人的にはどうなのかな、とも思うのですが」と言って、苦笑いである。

 

これからの世代の対照的な2つの住宅購入に何を学ぶか。
これからの世代の対照的な2つの住宅購入に何を学ぶか。

 

こんな話を聞いた数日後、私のところにも、家を買いたいという30代の夫婦AさんとBさん2家族からの相談があった。あまりに対照的な2つの夫婦の相談事、お付き合い願いたい。

 

Aさん夫婦は都心の一流上場会社勤務の共働き。子供は保育園に通う4歳と1歳の女の子。住んでいるのは、交通の便の良い都心の賃貸マンション。広さは55㎡。家賃は15万円だという。

 

二人の年収を合わせると1000万円ほど。なかなかの高収入といえる。

 

そんなAさん夫婦からの相談は、子供も増えて今借りているマンションが手狭になってきたので、東京湾岸部のタワーマンションを購入したい、とのことだった。価格は7500万円。こつこつ貯めてきた貯金は夫婦合わせて1000万円強。これにフラット35を活用した住宅ローンで6500万円を借りて買いたい、との計画だ。

 

ローン返済額は、夫婦でそれぞれ借入れ。変動金利を使って期間35年にすれば、毎月の返済額は16万円強、ボーナス時は60万円。年間返済額は280万円ほどだ。

 

この低金利時代の恩恵で年収1000万円超の夫婦から見れば、十分支払えるレベルだ。なおかつ、住宅ローン減税による所得減税分が年間40万円あるから、実質の支払い負担額は向こう10年については年間240万円程度ですむ。現在の家賃は月々15万円、これは「買うしかない」というのが夫婦の結論になった、というわけだ。

 

そこで、物件や資金計画はともかくとして、なぜ家を買わなければならないかをはじめに聞いてみた。

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不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

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