「人口減少社会」は大家さんに逆風だが…
家主業とは、住まいを人に貸すビジネスだ。住まいを借りてくれる人を探し、住んでもらい、その対価として家賃を受け取る。実にシンプルなビジネスといえる。そのため、これまでは他人に貸すことができる住宅さえあれば、誰にでもでき、しかも一度入居が決まれば、家賃滞納等のトラブルが発生しない限り、退去するまであまりすることはない「不労所得」ビジネスとして世間から認識されてきた。裏を返せば、他人に貸す家を持てる者、すなわち資産家のみができる、いわば「特権階級」の事業だった。
そんな家主業だが、「人口減少」「空き家増加」などが社会問題としてニュースで取り上げられると、これからは「安泰とはいえない」と思う人もいるだろう。確かに安泰ではない。安泰ではないのに、なぜ本書では家主業を「生涯現役」で稼げる事業として薦めるのか。
総体的に見れば、「人口減少社会」突入は一見、家主業にとって逆風に見えるかもしれない。しかし、社会の構造的な変化、人々の価値観やライフスタイル、ワークスタイルの変化の兆しに目を向けると、今後、家主業を取り巻く環境にも大きな変化が訪れ、これから家主業を始めようという人にとっては、知恵と工夫次第で開拓の余地は大きい。その理由を説明しよう。
まず、将来不安の根本的な要因の一つ、「人口減少」を示す人口動態の統計を見てみよう。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」によれば、2015年の日本の総人口は1億2709万人だったが、出生中位推計で、2040年には1億1092万人、2060年には9284万人、2065年には8808万人になるものと推計される。
だが、家主業を営むに当たって重要なのは、人口以上に世帯数だ。特に単身世帯の住居といえば圧倒的に賃貸が多いため、単身世帯数の推計を確認しておくことは必要だろう。「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」を見てほしい。2020年には1934万世帯だが、10年後の2030年には2025万世帯とピークを迎える。20年後の2040年についても1994万世帯と、高い水準で推移していくと予測される。
なぜ、単身世帯が増加していくのだろうか。最大の理由は高齢化だが、2つ目の理由は未婚者が増加していることだ。
「40歳以上の配偶関係別人口の推移」という統計を見てほしい。40歳以上の未婚者及び死・離別者の数に着目し、その数を合計すると、2020年は男性1036万人、女性1632万人。2040年になると、男性1052万人、女性1822万人で、男女合わせて20年で206万人も増加する。これまで、単身世帯といえば、学生、20~30代前半の社会人の若者が主だったが、今後は中高年の単身向け賃貸市場が拡大することは間違いないだろう。