「実は…」髪が生えて知った、妻の苦い思いとは…

ところで、私は1度目の植毛手術を受けるときから、それを人に隠さず、カミングアウトしていました。「植毛をするから、きっと変わると思うよ」という言葉で予告していましたね。

 

その後、2011年にもFUE法で、3度目の植毛手術を受けました。頭頂部に1500株を移植したのです。この頃には髪はかなりフサフサになり、私のカミングアウトを聞いていた周囲の反応もより大きいものになりました。「植毛手術ってすごいね~!」という声をたくさんかけてもらい、嬉しかったものです。中には、あまり大げさな反応をしない人もいますが、それはデリケートな話題として気を使ってくれているのだと思います。

 

 

ところで、薄毛の悩みから解放されてしばらく経った頃、ふと気がついて、妻に尋ねてみたことがあります。「僕の髪が薄かった頃、本当はどう思っていた?」そう訊くと、彼女はこう答えました。

 

「デートしていた頃、よく食事に行ったでしょう。テーブルをはさんで向き合って麺類をすすったりしているとき、ふと目を上げると、うつむいたあなたの頭が目に入るの。今だから言えるけど、頭のてっぺんの薄い毛と地肌が見えると、正直、『あー……』って寂しい気持ちがしてた」

 

そんなこと、全然知りませんでした。彼女も、付き合っている恋人の髪が薄いことを寂しく思っていたのです。

 

でも、そんなこと私に言えるはずもありません。それにもちろん私のほうは、話題にしたくもされたくもありませんでした。お互いに辛かったのですね。申し訳ないことをしたと思いました。でも、そのときは「今だから言える話」として二人で笑い飛ばすことができました。それも植毛を受けて、悩みがすっかり過去のこととなったからです。そのとき、また改めて「植毛をして、本当によかった!」と思ったものです。

 

●筆者コメント

このH・Iさんの場合は、典型的なAGA(男性型脱毛症)でした。額の生え際から薄毛が進行して、後退が進んでいました。かなり広い部分が薄毛の状態になっていたので、現在の自毛植毛手術としては最大限に近い毛根を採取し、移植したケースです。額から頭頂部にかけては毛が薄いので、毛根が採れるのは頭の脇のほうと後頭部だけ。しかも2回目、3回目となると、採れる場所がどんどん限られていき、難しい手術となります。

 

そこで、可能なところ、採れるところから採れるだけ、といったレベルでベストを尽くし、移植を行いました。その甲斐あって、今ではとてもフサフサと豊かな髪になりました。

 

 

医学博士

音田 正光

 

 

この記事は、音田正光著『薄毛革命「自毛主義」のすすめ』より一部を抜粋・再編集したものです。

薄毛革命 「自毛主義」のすすめ

薄毛革命 「自毛主義」のすすめ

音田 正光

幻冬舎メディアコンサルティング

髪が抜けて少なくなる、頭頂部が薄くなる――これは男性にとって古今東西、永遠のテーマといえる苦しみであり、さらに昨今は女性にも薄毛の悩みを抱える人が増えています。 本書では、さまざまな治療法を試しては失望してきた…

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