マンションの中古流通はネットに馴染みやすい
金融マーケットという日々変動するマーケットに翻弄され続けてきた不動産業界に、さて次なる革命の波が襲いかかってきている。「不動産テック」の波である。
不動産取引においては売買する場合でも賃貸する場合でも、不動産会社には重要事 項説明という行為が必要になる。重要事項説明とは、取引に際して重要と思われる項目について、宅地建物取引士の資格を持つ者が、関係者の面前で説明をしなければならないもので、取引する人が遠隔地に住んでいても実際に足を運んで説明する必要があった。
スカイプなどが発達した現代においてこうしたシーラカンスのような業界のルールは、とりわけ日本の不動産を外国人が買い求めるようになると、取引上での大きな障害として指摘されるようになった。
国もようやく2018年の4月から、賃貸仲介に限ってネット上での説明を認めるように法律の一部を改正したが、売買についてはまだ慎重な姿勢を崩していない。
またネットを通じて不動産を売りたい人、買いたい人をマッチングさせる動きも活発になってきた。ヤフー不動産やソニー不動産などはマンション取引を主体に売主の仲介手数料ゼロを売り文句に不動産業界に蔓延る手数料主義、売り手と買い手を同時に囲い込む両手取引に殴り込みをかけてきている。
不動産は「2つとして同じものが存在しない」という特殊な商品であることから取引も複雑であり、こうしたネット上のマッチングを含め、ネット取引全般に対して否定的な見方をする人もあるが、私は不動産テックが今後不動産取引を活発化させることに、おおいに役立つのではないかと期待している。
とりわけ、マンションの中古流通はネットに馴染みやすい。マンションの部屋は戸建て住宅などと違って、間取りも単純で住戸内の設備仕様を点数化しやすい。また同じ棟であれば建物としての条件がほぼ同じであるため、価格付けが容易である。大規模マンションであれば常に複数の住戸が流通マーケットで取引されていることから、すでに相場も形成されていることもネットに馴染みやすい理由の一つだ。