越後湯沢リゾートマンションは「負動産」から「腐動産」へ

新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産で知る日本のこれから』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産を通して日本経済を知るヒントをお届けします。

越後湯沢リゾートマンションが10万円で買える?

2015年8月に私が『2020年マンション大崩壊』(文春新書)の冒頭に記した新潟県南魚沼沢町のリゾートマンションの状況は、当時大きな反響を呼んだ。その内容はおおむね以下のようなものだった。

 

1980年代後半から90年代前半の空前のスキーブームの影響で、越後湯沢の街には50棟以上、戸数にして約1万5000戸ものリゾートマンションが建設、分譲された。

 

当時は空前のカネ余り時代。ねこも杓子もスキーに興じるのがあたりまえだった。ゲレンデの前にマンションがあれば、なかなか予約がとれないホテルに宿泊するよりも、リゾートマンションを買えば、ゲレンデはわが物になる。誰もがそのように考え、その需要をアテにした多くの不動産業者が群がり、越後湯沢の駅前から苗場スキー場にかけてリゾートマンションが林立した。

 

バブル崩壊から30年がたとうとする現在、当時販売された多くのマンションの中古価格が10万円の値付けになっている。部屋の大きさとはほとんど関係なく「ひと声10万円」だ。分譲当時の価格からは100分の1どころかそれ以下。バナナの叩き売りのような状況になっているのだ。

 

原因は、日本の少子高齢化や日本人のスキーに対する興味の減退だ。スキー人口は1993年の年間1860万人をピークに減り続けている。日本は少子高齢化の渦に巻き込まれ、若い世代の経済力は大幅に減退。スキー人口は2016年の調査では580万人。この23年間で3分の1以下に減少している(日本生産性本部「レジャー白書」)。

 

その結果、スキー場には閑古鳥が鳴き、必要がなくなったリゾートマンションの価格は暴落してしまった。ちなみに10万円とは、上場株式の株価でいえば1円を意味する。流動性がないゴミと一緒、ということだ。

 

さらにこうしたマンションで次に問題となるのが、所有者の多くが管理費や修繕積立金の支払いを滞納することだ。管理費が払われないことには、やがてエレベーターの保守点検もままならず、共用廊下の電気すら消えたままになる可能性だってある。

リゾートマンションを買う中国人。
リゾートマンションを買う中国人。

ましてや大規模修繕なんてできるわけがない。使われなくなり、興味も持たれなくなったマンションは急速にスラム化していく。私が同書で警鐘を鳴らしたのは、こんな越後湯沢のリゾートマンションで生じている現象だった。

 

その後多くのメディアが、この越後湯沢のリゾートマンションの惨状を取り上げたが、一部リタイアした団塊世代などがマンションを買って住みついているという報道があった以外は、状況はほとんど変わらず、事態の解決には程遠い状況が続いていた。

オラガ総研 株式会社 代表取締役

1959年、アメリカ生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループを経て、三井不動産に勤務。2006年、J-REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在は、オラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『民泊ビジネス』『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』など多数。

著者紹介

連載不動産の動きを観察すれば、日本経済がわかる

不動産で知る日本のこれから

不動産で知る日本のこれから

牧野 知弘

祥伝社新書

極地的な上昇を示す地域がある一方で、地方の地価は下がり続けている。高倍率で瞬時に売れるマンションがある一方で、金を出さねば売れない物件もある。いったい日本はどうなっているのか。 「不動産のプロ」であり、多くの…

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