物件の周辺環境の変化、急な修繕、家賃滞納など数々のリスクが潜む不動産投資。資産形成の手段として注目が集まっているものの、事前にリアルな失敗パターンを知ることは必要不可欠です。そこで本記事では、多くの個人投資家にコンサルティングを行い、不動産投資の方法を提案する、株式会社カクセイの平山智浩氏・渡辺章好氏の共著『失敗例から学ぶ 儲かる不動産投資の極意』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、不動産投資の実態を紹介します。

築20年超の物件を「ペット可」にしたところ…

【ペット可物件の原状回復トラブル】

 

所有する物件が築20年を超えたこともあり、ペット可物件にすることにしました。幸い、すぐに入居が付いたのですが、1年ほど住んで退去したときに、部屋がボロボロでした。猫を飼っていたようですが、柱や建具で爪をといで傷だらけになっており、畳の部屋やふすまにおしっこがかけられているようです。とても普通の原状回復では直る状態ではありません。

 

見積もりを取ったところ、通常、原状回復でかかっても20万円のところ、50万円もかかるようです。退去清算で値段を伝えたところ、「高すぎる!」と言われてしまいました。また、管理会社からは「請求しても払ってもらえないケースもある」と聞きました。いくら空室が埋まるといっても、このような出費が伴うようであれば、まったく意味がありません。

 

猫のひっかき傷が…
猫のひっかき傷が…


 

◆多額な費用がかかるペット被害

 

築年数の経った物件の空室を埋める策として、「ペット可物件」があります。常識を持ってペットを飼育してくれるのであればいいですが、中にはヒドイ飼い方をする飼い主もいます。猫の発情期のオシッコは臭いがきつく簡単には臭いが取れません。一度リフォームをしたのですが、やはり臭いが取れないから、もう1回やったケースもあります。

 

実をいうと、オーナーがそのまま空き家にしているケースが多いのです。臭いが消えることはないにしても、「気にならない程度になった」とか「気にしない人が住んでくれる」など、そのような妥協しかないようです。管理会社もさまざまな消臭剤を探してきて臭いを消す研究はしているのですが、それも一時的な効果しか期待できません。

 

不動産オーナーは、入居者に対して「部屋を貸してしまうとひどく汚される!」と思っていたら絶対に貸せません。性善説でなければ大家稼業などやっていられない現実もありますが、それなりに予防すべきだと考えます。

 

そのため、ペット飼育可にする際は、ペットの規約をしっかりと提示します。それにしてもペットに関しては、ペット飼育が不可の物件で、隠れてペットを飼うトラブルもあれば、「1匹しか飼っていないと信じていたが、いつの間にか20匹に増えていた!」という最悪のケースもあり、そこまでいくと獣臭が取れなくなります。その結果、たとえ家賃が5万円程度でも、修繕費で80万円や100万円もかかってしまうわけです。

 

都心であれば5万円程度の家賃ではワンルームですが、郊外や地方で家賃5万円ともなれば、面積も広くなります。そして、賃貸契約書ではペット規約違反があれば、入居者が原状回復費用を支払うと決められていても、「高すぎる!」とクレームが出たり、「支払わずに逃げてしまう」というケースもあります。そのようなリスクがはらんでいることを考えなければいけません。

「フルリノベーションの提案」は慎重に検討すること

【リフォームはどこまでお金をかけるべきか】

 

都内23区に区分マンションを所有しています。退去の後に原状回復工事を行いますが、かかっても20万円くらいです。これが管理会社からの提案で物件も古くなったということで100万円かけて水回りを修繕することになりました。

 

結果でいえば、リフォーム後に入居がすぐに決まったのですが家賃は同じままです。100万円かけてリフォームせずに、家賃を下げれば良かったのではないか、今になって後悔しています。

 

◆適正なリフォームとは?

 

入居者が決まらない空室に対して、「部屋が悪い」と言われてリフォームを提案されたことがあるオーナーもいることと思います。そういう提案をどこまで受け入れるかは難しい問題です。

 

すべてを「やります」と言っていたら、かかる費用は原状回復どころではありません。例えば、「フルリノベーションしましょう」という話になれば、何百万円もかかります。リーシング計画に伴うリフォームであれば、「リフォームしたら、本当にお客さんが付くのか」という問題があります。

 

業者は提案した以上「付くと思いますよ」と答えますが、そもそも根拠がいい加減だったりします。そこで別のA社に聞いたら「これは完全にキッチンを交換しないとだめです」と言われたり、リフォームに詳しいBさんに見てもらうと「2DKの間取りなので、壁を全部ぶち抜いて、広い1LDKにしたほうがいい」と言われる。さらにC社からは「直さなくても入居条件や家賃を変えれば付くだろう」と言われ、D社に聞いたら、「そこまで費用のかかるリフォームはする必要はないけど、壁紙だけ変えたほうがいい」と言われる。

 

とにかくいろいろ言われます。それはいろいろな可能性があるからです。

 

一番理想的なのは一社から複数の提案をあげてもらい、「このままでいくのか、思い切って直すのか」をオーナーが判断することです。賃貸経営ではリフォーム以外にも出費があります。ADと呼ばれる広告宣伝費用であったり、フリーレントであったり。そこは全体のバランスと、オーナーの懐具合でかける予算を決めます。

 

「リフォームしないと決まらない部屋」は、もしかしたら今の賃貸需給から漏れている物件かもしれません。そこにお金をかけるのはリスクが伴います。

 

室内がキレイになれば、本当に空室が解消できるかは未知数です。実際直しても家賃が上がらないこともあります。というのは「リフォームで儲けたい」という業者の思惑があるケースも多いのです。

 

あるアパートで何部屋かの空きが出て、2室を完全にフルリフォームをしました。第一印象を良くして、間取りも使いやすくしました。入居者は決まりましたが、費用対効果で見るとあまり良くありません。私たちはそのときに「オーナーの出費に対して、費用対効果が悪いな」と感じました。

 

出した費用を家賃で元を取るには長い時間がかかります。そこで、他の空室は、大規模なリフォームはせず、原状回復だけして賃料を下げて募集しました。リフォーム費用を回収するまでのことを考えれば、家賃は下がりましたが追加投資が少ない分、回収というゴールが遠くに行ってしまうことはありません。こうした、投資判断をオーナーが行っていかなければなりません。

 

オーナーも、何が一番自分にとってベストなのか、さまざまな意見を聞いて決めないといけません。オーナーの中には「この物件が気に入っていて、ずっと保有していきたい、大切にしていきたい」といった採算重視でない方もいらっしゃいますし、地主は、ある程度税金対策をする必要もあり、それほど収益を大きくしなくても、手堅く安定した利益を取っていきたいと考える方もいます。

 

売却を検討している人の場合、少しお金を投入して、物件の見栄えを良くして、家賃を上げて、少しでも利回りを上げて高く売りたいと考えます。このように物件にどれだけお金をかけるかという判断は、オーナーが「今後どうしたいか」にもよるところが大きいのです。

 

投資として考えると、リフォームのお金を他のことに使ったほうが効率いいかもしれません。例えば何百万円かけてリフォームするくらいなら、そのお金でローンの繰り上げ返済をしたほうがいい場合もあるでしょう。もしくは、次の購入物件の頭金に充てたほうがいい場合もあったりするのです。

 

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平山 智浩・渡辺 章好

幻冬舎メディアコンサルティング

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