新入社員の意識調査で見えた…若者が「働きたくない」真の理由

中小企業の人手不足が深刻化しています。2018年上半期における「人手不足倒産」の件数は3年連続で前年同期を上回り、2013年1月の調査開始以降の半期ベースでも最多を記録しました。どうにかして人材を獲得しようと、「初年度から年収1000万円」を確約する企業なども現れていますが、本質的な問題は、「若者の仕事観」にあるようです。『引き継いだ赤字企業を 別会社を使って再生する方法』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、解説します。

深刻化する「中小企業における人手不足」

中小企業における人手不足の現状を具体的な数字で確認していきましょう。

 

リクルートワークス研究所が2014年6月に、従業員30人以上の企業で採用活動をしている1000社にインターネットを通じて行った「人手不足の影響と対策に関する調査」によれば、正社員の中途採用に関して「人数を確保できた」と答えたのは67.9%、「確保できなかった」は32.1%に達しました。3社に1社が採用人数を確保できない状況にあるわけです。

 

アルバイトとパートでも「確保できなかった」という回答が30.6%に上っており、小売業や飲食・サービス業では4割を超えています。しかも、人数が確保できない企業の52.7%は、人手不足が解消する見通しが「ない」と答えています。

 

同調査において女性や高齢者を積極的に採用対象としていた企業は約15%であることから、この調査結果からは若者を募集している企業が、その雇用ニーズを十分に満たすことができずにいる状況がうかがえます。

 

では、なぜ、これほど多くの企業が若者を確保することができないでいるのでしょうか。その背景には、ひと昔前の世代とは全く異なる、現代の若者の仕事に対する大きな意識の変化が関わっています。

現代の若者は「経済的な豊かさ」に魅力を感じない

まず、比較のために、現在、50代あるいは60代の人たちがまだ若かったときに、そもそもなぜ仕事をしたのか、働く目的は何だったのかを考えてみましょう。

 

おそらく、ほとんどの人は経済的に豊かな生活をするため、より具体的にいえば、一生懸命働き、お金を貯めて自動車を買い、マイホームを得ることが最も大きな目的だったはずです。

 

しかし、今の若者たちは、そのような経済的な豊かさに魅力を抱かなくなっています。若者の多くは自動車を持つことに関心がなく「若者の車離れ」という言葉が一般化しウィキペディア等の辞典に掲載されているほどです。

 

また、家についても同様に「若者のマイホーム離れ」が進んでおり、一生賃貸住宅でも構わないと思っている若者が増えているとの指摘があります(家については、少子化の中で「いずれは親の家を相続できる」という状況があることも影響しているかもしれません)。

 

そして、若者たちのこのような物質的な豊かさに対する無関心な傾向は、仕事に対する意識に関してもはっきりと表れています。[図表]に挙げたグラフは、日本生産性本部が毎年行っている「働くことの意識」に関する調査の中から、新入社員の「働く目的」についての調査結果をまとめたものです。グラフが示すように、「経済的に豊かな生活を送る」ことを働く目的としている者の割合は明らかに低下傾向にあります。

 

[図表]働く目的

 

中小企業のなかには、人手不足を解消しようと、初任給を大幅にアップするなどいわゆる「ニンジン作戦」をとるところも現れています。

 

しかし、若者たちが経済的な豊かさを積極的に求めていない状況にある中で、その効果が果たしてどれほどあるのかは疑問です。若い人材を確保したいのであれば、そのような小手先の対策ではなく働く会社に対して、彼ら、彼女らが何を求めているのかを正しく知ることが必要となるでしょう。

 

日本生産性本部の「働く目的」に関する調査では、さらに会社の選択理由について新入社員に対してアンケートしています。その回答の中で最も多いのは「自分の能力・個性が生かせるから」であり、2番目は「仕事がおもしろいから」となっています。

 

この結果を踏まえれば、自分の能力・個性を生かすことができ、仕事が面白そうだと感じられる企業を若者は就職先として求めているといえるでしょう。

 

社員の能力・個性を生かせるような会社になるためには、各自の素質や特性に応じて活躍できるような社内環境を整えることが必要になります。人事制度等の改革を行うことで、そのような社内環境が整備されれば若者を引きつけることができるかもしれません。

 

では、「仕事がおもしろそうだ」と思わせるためには、どうすればよいのでしょうか。

 

そのための一つの方策としては、同業他社では行っていない、オンリーワンの取り組みを行うことが考えられます。

 

他の会社が同じようなことをしている中で、1社だけどこか違う、変わった試みを行っていれば自然に目を引くでしょうし、しかもその取り組みが創造性に満ちたユニークなものであれば、「この会社は面白いことをやっている。ぜひ、ここで仕事をしてみたい」という気持ちを若者に抱かせることが期待できるかもしれません。

株式会社スペース 代表取締役兼CEO

1954年東京都生まれ。三井不動産販売退職後、祖父が大正12年に中野で創業した「山一不動産」の3代目に就任。バブル崩壊とともに300億円の負債を背負いながら、事業再生に奔走する。1996年「スペース」を創設し、「山一不動産」の営業権譲渡を行うことで、先代からの基盤を守り、社員を切り捨てることなく事業再生させた。現在はこの時の自身の経験を元に、同じような悩みを抱える中小企業経営者の相談に乗り、専門家チームのメンバーとして、ボランティアでアドバイザーも務めている。中野区観光協会準備会メンバー。一般社団法人中野区観光協会監事。

著者紹介

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