不動産オーナーが「空室」よりも「家賃滞納」を恐れるワケ

不動産投資において、最大のリスクは「空室」ではなく「家賃滞納」であるといっても過言ではありません。本記事では、株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者・倉橋隆行氏監修の書籍『賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法』(プラチナ出版)より一部を抜粋・編集し、実例とともに「賃貸トラブル」の予防策や解決法を具体的に解説します。

「こんなことなら空室のままでも良かった…」

今回は、実際に賃料を滞納されたらどのような収益になるかを解説します[図表1]。

 

賃料6万3000円のマンションの一室を所有していた場合の例ですが、一番左側が「滞納無」となっています。

 

家賃の年間収入としては73万6000円が毎年入ってくるとします。そして管理費、修繕費、固定資産税などを差し引くと、支出が20万円あります。この物件を700万円のローン(利息3%・25年元利均等返済)で購入しているとすると、約40万円の返済になりますので、キャッシュフローベースで考えると、約15万6000円が毎年の収入となります。

 

これが、滞納が始まり、裁判所に支払督促手続を行い、6カ月分が回収できたとします。支払督促手続の費用が5万円ぐらいかかったとすると営業純利益は12万8000円になり、キャッシュフローはマイナス27万2000円ということになります。

 

次に滞納12カ月、つまり年間1円も賃料が入らず、建物明渡請求訴訟と強制執行をした場合、その裁判費用が60万円かかったとすると、営業純利益はマイナス80万円になります。そしてキャッシュフローはマイナス120万円にもなってしまいます。

 

当社の場合、社内に弁護士がいますから手続費用はこのくらいで済みますが、一般的に法的な手続を弁護士に依頼すれば、もっと費用がかかってくると思います。これを考えると、賃料の滞納は非常にリスクだということがおわかりになると思います。

 

お金もかかって、時間もかかって、精神的にも疲れるので、こんなことなら空室のままでも良かったのではないかと考える人もいるのではないでしょうか。

 

※賃料月額 ¥63,000 円の場合(区分)
[図表1]賃料を滞納した場合の収支 ※賃料月額 ¥63,000 円の場合(区分)

滞納された賃料を損金として計上することはできない⁉

先に説明したとおり、我々は日々、このような手続を行っているわけですから、入居審査の重要性を知っているわけです。

 

実際に現場で賃料の督促手続や強制執行などに携わっていると、最近では強制執行費用と家財等の撤去費用で40万円ぐらいかかります。

 

これは建物明渡請求の強制執行と同時に、室内にある家財等を専門の業者に保管してもらい、その後、処分してもらうためにかかる費用です。したがって、単純に引越しや家財の処分費用というものではないので、思ったより費用はかかってきます。さらに原状回復費用も賃料の滞納している人だと室内も荒れていることが多く50万円ぐらいかかったり、ユニットバスやキッチンセットも使えないとなると、ワンルームマンションでも180万円ぐらいかかってきます。

 

弁護士費用も建物明渡請求訴訟の場合だと50万円ぐらいかかります。この弁護士費用というのは、建物の財産的価値によって異なるため、高額な物件であればあるほど弁護士費用も高額になります。これらを考えると、この損失を回収するのは大変な期間がかかってきてしまいます。

 

さらに賃貸経営においては、利益が出れば不動産収入に対して税金がかかってきます。[図表1]の中では、管理費修繕積立金等や裁判費用等は経費で認められ、ローン返済分の金利や減価償却費も経費で認められます。

 

しかしあまり知られていないのが、賃料の場合、滞納があっても、賃料の収入があったものとして不動産収入の申告をしなくてはならないことです。その入居者が、その物件に住んでいる限りは賃料を滞納していても収入として計上し、建物明渡請求訴訟などして強制執行ができれば、とりあえず賃料収入はなくなったものとして認められます。

 

しかし、そこまで滞納された賃料を損金で計上するには、その入居者である契約者が支払う能力がなくなったと認められない限り、損金で計上できないのです。つまりその契約者が破産したとか、その物件の退去後も請求をし続けたけど行方がわからなくなったとか、相応な理由がないと損金で落とせません。

 

そう考えると、さらに賃料等の滞納というのは空室よりも厄介だということがおわかりいただけたと思います。正直言って、やはり賃貸管理会社の滞納保証付賃貸管理システムを利用されるとこのようなことはなく、このリスクはオーナーではなく管理会社が追うことになりますので、もし副業で賃貸経営を行っているなら、多少の管理料を支払っても、総合的にみれば有利な賃貸経営ができると思います。

 

このような状況を理解したうえで、どのようにそのリスクを分析して、回避し、低減して、転嫁するのかということが必要です。そのためにはやはり、入居審査をすることによって、不良と思える入居者さんを事前に防いでいくのが必要になります[図表2]。

 

[図表2]リスクマネジメントが必要

株式会社CFネッツ代表取締役
兼CFネッツグループ最高責任者 

1958年生まれ。株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者であり、グループ企業18社を率いる現役の実業家。20社を超える起業に携わり、複数の事業再生案件も成功させている。また、自ら渡米して国際ライセンスのCPM(Certified Property Manager)を日本人で初めて取得しており、現IREM‐JAPANの創生に携わり、2002年の会長に就任している。また、1995年には日本で初めてPMマニュアルを出版、プロパティマネジメントの近代化に取り組んでいるPM業界の第一人者でもある。

著者紹介

株式会社CFネッツ
プロパティマネジメント事業部マネージャー 

神奈川県横須賀市出身。専門学校卒業後、IT企業にSEとして6年間勤務。その後、横浜市にある不動産会社にて17年間勤務。2011年8月CFネッツに入社。不動産業界でも経験は20年を超え、特に投資用不動産の資産管理を得意としている。中でも的確なバリューアップ(資産価値向上)提案・空室対策は、多数の投資家オーナーより絶大な支持を得ている。プロパティマネジメント事業部マネージャーとして日々業務に従事し、社員の育成にも力を発揮している。

著者紹介

有限会社シー・エフ・ビル
マネジメントリーダー 

大学卒業後、不動産会社へ入社。分譲マンション販売営業に携わる。その後、賃貸仲介営業を経て、賃貸管理業務に興味を抱き、2011年4月、CFネッツへ入社。CFネッツの管理部門である、シー・エフ・ビルマネジメントでリーダーを務める。保有資格:貸金業務取扱主任者、職業紹介責任者、宅地建物取引士、ビジネス実務与信管理検定。

著者紹介

連載管理会社のプロが実例で教える「賃貸トラブル」の解決ノウハウ

賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法

賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法

倉橋 隆行 上町 洋 片岡 雄介 世戸 孝司

プラチナ出版

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