不動産投資において、最大のリスクは「空室」ではなく「家賃滞納」であるといっても過言ではありません。本記事では、株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者・倉橋隆行氏監修の書籍『賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える 賃貸トラブル解決の手続と方法』(プラチナ出版)より一部を抜粋・編集し、実例とともに「賃貸トラブル」の予防策や解決法を具体的に解説します。

連帯保証人である父親がすでに死亡していることが判明

物件 神奈川県横浜市所在1Rアパート

契約 平成20年

貸主 当社

借主 IE 20代女性 会社員

連帯保証人 IT 60代男性 千葉県在住

 

今回のケースは、連帯保証人の相続人に対する滞納家賃の請求という案件の事例です。

 

借主IEは、20代前半の女性で、平成20年に当社との間で、神奈川県横浜市内の1Rアパートの賃貸借契約を締結し、以降、長年居住されていました。

 

連帯保証人ITは60代男性で、借主IEの父親です。借主IEは、毎月、真面目に家賃を支払っていましたが、平成28年のある日、家賃滞納が発生し、私が請求しても、連絡は一切とれず、支払も全くありません。借主IEの勤務先に在籍確認すると、ずいぶん前に退職済みとの回答。

 

このような場合、連帯保証人へも合わせて請求するのが通常の流れですが、連帯保証人ITへ電話をかけると「現在使われておりません」のメッセージが流れます。

 

 

滞納家賃請求の手紙を、連帯保証人ITの住所へ郵送すると、「宛所尋ね当たらず」で郵便物が返送されてきます。もしかすると、連帯保証人ITが、引っ越しでもして、それで電話番号と住所が変わったため連絡が取れないのかと思い、連帯保証人ITの現住所確認のため、連帯保証人ITの住民票を取得しますと、何と「平成27年●月●日に死亡」との記載があります。

 

とりあえず、連帯保証人ITはさておき、借主IEからの回収を目指しますが、借主IE、相変わらず連絡も取れず、また支払もない状況が続きます。連絡が取れれば、借主IEへ今後のことでアドバイスもできますが、連絡が取れない場合は、建物明渡請求の民事訴訟での解決となります。

 

まず、賃貸借契約の解除の催告のため、通知書を、内容証明郵便、特定記録郵便、建物訪問の方法で借主IEへ送ります。そうして、滞納家賃の支払期日になっても、支払も連絡もなかったため、支払期日の翌日に契約解除としました。

室内は空の状態…借主は夜逃げしていた

建物を改めて訪問しますと、電気メーター、ガスメーター、水道メーターがすべて停止しています。またポストの中は、チラシ等の滞留物で溢れかえっています。

 

これらの状況から、借主IEが夜逃げしたような形跡がみられましたため、玄関ドアの蝶番にセロハンテープを貼り、再度、日を改めて建物を訪問しますと、セロハンテープはそのままでしたため、警察官同行のもと室内の安否確認を実施しました。室内は、家財道具が一切なく、埃が積もっているだけの空の状態で、玄関ドアの鍵が部屋の隅へ残されています。合わせて借主IEの住民票を取得しますと、もう借主IEは、この建物とは別の横浜市内の住所へ引っ越しています。

 

このような、「借主に対し、家賃滞納の信頼関係破壊による賃貸借契約解除の通知書を送った後、契約解除日を過ぎても支払・連絡がない、室内を見ると、家財道具が一切なく、玄関ドアの鍵が室内に残されている」といった場合、借主が建物の占有の意思を放棄した=建物の明け渡し完了としています。

 

 

建物明渡請求の民事訴訟を提起して、建物明渡の強制執行という流れでの解決方法もありますが、今回のような、明らかに夜逃げしているような状況の場合、民事訴訟から強制執行までの約6ヵ月から7ヵ月の間、滞納家賃を膨れ上がらせるだけとなりますため、状況次第で、どのようにするかを判断しています。

 

次ページ:連帯保証人の「相続人」へ滞納家賃を請求することに

賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法

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