家賃滞納者の勤務先を暴き「給料差押え」、強制執行の末…

不動産投資において、最大のリスクは「空室」ではなく「家賃滞納」であるといっても過言ではありません。本記事では、株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者・倉橋隆行氏監修の書籍『賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える 賃貸トラブル解決の手続と方法』(プラチナ出版)より一部を抜粋・編集し、実例とともに「賃貸トラブル」の予防策や解決法を具体的に解説します。

滞納家賃の「支払督促」の申し立てたが…

物件 東京都〇〇区所在駐車場

貸主 当社

借主 借主O男性(50代)新聞配達員

連帯保証人 なし

 

今回は、給料の差押えによって滞納家賃を回収した事例です。

 

借主Oが借りていた物件は、部屋ではなく駐車場です。借主Oは、50代の新聞配達員の男性です。駐車場の賃貸借契約ということで、連帯保証人をつけずに契約を締結しました。

 

これは、私が途中から引き継いだ案件で、借主Oは当社に対し、家賃を約10万円滞納した後、平成24年に駐車場を明け渡しました。この借主Oが、駐車場を明け渡した後、私が前任者より引き継ぎました。

 

この借主Oは、都内在住で、手紙、電話、訪問にて滞納家賃を請求しましたが、支払も連絡もなかったので、法的手続のうちの一つである「支払督促」の申し立てをしました。申立後も、相変わらず借主Oからは、連絡も支払もなかったため、借主Oの滞納家賃約10万円の債務名義を取りました。

 

駐車場の明渡し=平成24年

滞納家賃=約10万円

 

簡易裁判所へ「支払督促」を申立

債権者:当社

債務者:借主O

→借主Oからは異議申立なし

⇒「債務名義」取得

 

債務名義を取ったは良いものの、滞納家賃は全く支払がない状況が続きます。

 

借主Oは、当社との間で駐車場の賃貸借契約を締結したときは、東京都○○区の1Kのアパートに居住、次は隣の区のアパートへ引っ越し、そして4年後、横浜市内の1Kマンションへ引っ越しています。

 

横浜市内の1Kマンションを、滞納家賃請求のために繰り返し訪問していますと、そのマンションに借主Oの居住の様子が見られなくなりました。そのため、借主Oの住民票を取得してみますと、神奈川県の三浦郡へ転居しています。早速、その転居先と思われる住所へ行ってみます。【写真】が、借主Oの転居先と思われる賃貸マンションです。

 

[図表2]
【写真】

給料の手取額の4分の1のみが差押えの対象に

さて、この賃貸マンションの隣には、新聞販売店があります。なお、借主Oが、当社へ駐車場の賃借の申込をしたとき、その申込書に記載のある借主Oの職業は新聞配達員でした。借主Oは、この賃貸マンションに居住していて、賃貸マンションの隣には新聞販売店があります。

 

これはもしかすると、借主Oが、この新聞販売店に勤めている可能性があります。もし、そのとおりであれば、この新聞販売店から借主Oに対し支払われる給料の差押えができます。

 

なお、給料の差押えをするときですが、債務者の勤務先である法人の商号が、裁判所への申立て時に必要となります。たとえば、債務者の勤務先が「片岡ラーメン店」であっても、これが商号であるとは限りません。「片岡ラーメン店」は屋号であり、このラーメン店を経営しているのは「片岡食品株式会社」という法人の場合もあります。

 

この借主Oが勤めているかもしれない新聞販売店の看板を見ますと、『株式会社』とか『有限会社』という名称は見当たらず、「○○サービス」としか掲示されていません。商号を確認するべく、インターネットで、あれこれと検索してみましたが商号は見つかりません。

 

どうしたら新聞販売店の商号を知ることができるのかですが、私は、以前、とある先生に次のようなことを教えてもらいました。

 

「AさんとBさんは互いに知り合いだが、AさんとBさんは、Cさんのことを全く知らない。Cさんは、Bさんに関する情報をAさんから聞き出したい。そういうとき、CさんがAさんからBさんに関する情報を聞き出すにはどうすれば良いのか? たとえば、AさんがCさんへ、Bさんに関する情報を教えた場合、『もしここで、CさんへBさんに関する情報を教えると、Bさんが不利益を被るかもしれない』と、Aさんが判断すると、AさんはCさんへ、Bさんに関する情報を教えない傾向がある。反対に、『CさんへBさんに関する情報を教えると、Bさんは利益を得る』と、Aさんが判断すると、AさんはCさんへ、積極的にBさんに関する情報を教える傾向がある」。

 

私はこの教えを応用して、新聞販売店の法人の商号が「株式会社T」であることを聞き出すことに成功しました。私が、どのようにして、聞き出したかは伏せておきます…。

 

そして、借主Oが株式会社Tに勤めているのかどうかは確信できませんが、借主Oが、新聞販売店の隣に居住しているので恐らくそうであろうと、裁判所へ給料差押えを申し立てしてみました。

 

すると思惑どおり、新聞販売店である株式会社Tには、借主Oの毎月給料の差押え分がありました。ちなみに、給料の差押えですが、もし給料を全額差押さえとなると、差し押さえられる債務者の生活が厳しくなるということで、その月の給料の手取額の4分の1のみが差押えの対象となります[図表]。たとえばその月の給料の額面が25万円で、手取り額が20万円だとしますと、手取り額20万円の4分の1である5万円が差押え可能な金額です。

 

[図表3]
[図表]

 

さてこうして、株式会社Tから当社へ、滞納家賃全額が回収できるまで、差押さえ分の金額が支払われ、その後、完済となりました。

 

【利用した法的手続】

・支払督促(滞納家賃請求)

・給与債権差押えの強制執行

株式会社CFネッツ代表取締役
兼CFネッツグループ最高責任者 

1958年生まれ。株式会社CFネッツ代表取締役兼CFネッツグループ最高責任者であり、グループ企業18社を率いる現役の実業家。20社を超える起業に携わり、複数の事業再生案件も成功させている。また、自ら渡米して国際ライセンスのCPM(Certified Property Manager)を日本人で初めて取得しており、現IREM‐JAPANの創生に携わり、2002年の会長に就任している。また、1995年には日本で初めてPMマニュアルを出版、プロパティマネジメントの近代化に取り組んでいるPM業界の第一人者でもある。

著者紹介

株式会社CFネッツ
プロパティマネジメント事業部マネージャー 

神奈川県横須賀市出身。専門学校卒業後、IT企業にSEとして6年間勤務。その後、横浜市にある不動産会社にて17年間勤務。2011年8月CFネッツに入社。不動産業界でも経験は20年を超え、特に投資用不動産の資産管理を得意としている。中でも的確なバリューアップ(資産価値向上)提案・空室対策は、多数の投資家オーナーより絶大な支持を得ている。プロパティマネジメント事業部マネージャーとして日々業務に従事し、社員の育成にも力を発揮している。

著者紹介

有限会社シー・エフ・ビル
マネジメントリーダー 

大学卒業後、不動産会社へ入社。分譲マンション販売営業に携わる。その後、賃貸仲介営業を経て、賃貸管理業務に興味を抱き、2011年4月、CFネッツへ入社。CFネッツの管理部門である、シー・エフ・ビルマネジメントでリーダーを務める。保有資格:貸金業務取扱主任者、職業紹介責任者、宅地建物取引士、ビジネス実務与信管理検定。

著者紹介

連載管理会社のプロが実例で教える「賃貸トラブル」の解決ノウハウ

賃貸トラブル解決のプロと弁護士がこっそり教える賃貸トラブル解決の手続と方法

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