経営者にとって、本来の「経営」に費やす時間が足りないというのは切実な問題です。本連載では、経理改革によって経営者が本来行うべき「社長業」の時間を確保し、自社に利益をもたらした事例を紹介します。

企業成長には「経理部門への積極的な投資」が不可欠

「間接部門は利益を生まないのでお金をかけてもムダだ」

「経理よりも営業に投資をしたほうが儲けにつながる」

 

中小企業の間では、従来、このようにバックサイドを軽視する傾向が見られ、経理部門への投資に対しても消極的でした。そのため、なかには、何十年間も経理のあり方を見直さないまま、いまだに手書きで帳簿をまとめているようなところもあるほどです。

 

しかし、ここまで紹介してきたように、企業が成長するためには、バックサイドに対して、とりわけ経理部門に対して積極的に投資していくことがもはや不可欠な時代となっています。

 

本連載では、前述した「プレジデントタイム」を導入して会計インフラを構築し、自成長につなげていった3つの中小企業──飲食業者・A社、販売業者・B社、広告業者・C社──の実例を紹介していきましょう。それらのケースをとおして、クラウド経理を導入すること、すなわち経理部門の抜本的な改革を行うことによって、どれだけ大きな利益が自社にもたらされるかを実感できるはずです。

売上処理、記帳作業・・・経理処理に年間300時間も!?

A社は、飲食店を2店舗運営しています。いずれも従業員数は10名であり、年商も1億数千万円とほぼ同額の状態です。

 

プレジデントタイムを導入する以前は、経営者であるAさんが以下のように経理業務の大半を行っていました。

 

①売上処理

売上を確認するために毎日わざわざ店舗まで足を運びレジをチェックして、エクセルに集計。そして、売上金を数日おきに銀行に入金していました。

 

②取引先に対する支払い

毎月15日になると食材業者などの取引先から送られてきた請求書をクリアファイルに収めて銀行のATMに向かい、一枚一枚金額を確認しながら振り込み作業を行いました。この作業だけでも、最低30〜40分は取られていたはずです。しかも、請求書をファイルの中に入れ忘れてしまうことも。「面倒くさい」と思いながら、オフィスに請求書を取りに戻り、再度ATMの列に並ばなければならないこともしばしばでした。

 

③給与処理

月末が近づくと「A社員は○時間働いて、B社員は○時間働いて・・・」などと従業員一人ひとりの働いた時間をとりまとめながら、給与を計算。労働時間などについて不明な点があれば該当する社員にいちいち確認や質問をしなければならず、そのために余計な時間と手間が取られることもありました。計算が終わったあとは、ATMでの払い込み作業も。こうした計算と支払いの作業だけで半日から一日はつぶれていました。

 

④記帳作業

1回の作業にかかる時間は15分程度でしたが、毎日行わなければならず合わせれば相当の時間になりました。

 

①から④の経理作業に費やされていた時間を合算すると、1年間でゆうに300時間を超えていたのは間違いないでしょう。

 

次回は、A社がプレジデントタイムを導入した結果を見ていきます。

忙しい社長を救う 経理改革の教科書

忙しい社長を救う 経理改革の教科書

李 日生,普川 真如

幻冬舎メディアコンサルティング

公認会計士として大手監査法人に勤め、国内外の多数の大企業の監査業務を担当してきた著者たち。経理・会計の専門家としての立場から中小企業の経営をサポートし続けてきました。こうした経験の中で、中小企業は経理部を社内に…

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