オーナー企業の約7割が「後継者を見つけられない」!?
本連載では、クラウド経理の導入によって会計インフラを構築し「仕組み化」を実現することによって、「社長の時間」を確保することの重要性について述べてきました。
実は「仕組み化」のメリットは、ほかにも数多く挙げられます。
例えば、現在、深刻化している中小企業における事業承継問題を解決するうえでも、「仕組み化」は大きな効果を発揮するでしょう。
おそらく経営者のほとんどは、「自分が引退したあとは、誰かに事業を引き継いでもらいたい」という思いを抱いているはずです。実際、2005年に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行った調査では、95.1%の中小企業経営者が「事業をなんらかの形で他者に引き継ぎたい」と回答しています。
しかし、そうした自らの願いをかなえられている経営者は、現状では少数にとどまっています。帝国データバンクが2016年11月に公開した「全国オーナー企業分析」では、オーナー企業のうち実に約7割が後継者を見つけられないままでいます。65歳以上のオーナー社長のうち約半数が後継者不在、60歳前後のオーナー社長でも不在率が7割近くに達しているのです。
このように後継者を確保できず社長を辞めたくても辞められない状況に陥っている経営者が増え続けているために、中小企業経営者の平均年齢が上昇傾向にあることも指摘されています(ちなみに、経済産業省によってまとめられた事業承継に関するガイドラインによると、中小企業経営者の引退年齢は平均で67~70歳になります。また、後継者を育てる期間を含めて事業承継には5~10年かかるといわれています)。
先代社長の手腕への依存を解消する「仕事の仕組み化」
このような”後継者難”の問題に多くの企業経営者が直面している背景としては、中小企業の経営に存在する構造的な問題を指摘することができるでしょう。
高度成長期から日本を支えてきた中小企業の経営者たちは、会社と文字どおり一体となって経営に取り組んできました。経営に必要なノウハウや知識はすべて自らの経験の中で養い蓄積してきたものであり、企業の経営者といってもその実態は伝統工芸の職人とほとんど変わりないといってもよいでしょう。
逆にいえば、日本の中小企業の多くは、経営者がいなくなれば会社が回らなくなり、たちまち存続できなくなる恐れがあるのです。
「今の社長にしか動かせない会社を、自分が継いで回していくことなどとうてい無理だろう」
このような中小企業経営の属人性に対する懸念が、後継者が現れることを妨げている大きな要因となっているわけです。
一方、ここまで再三触れてきたように、「仕組み化」はまさにそうした属人性を解消することを目的とした手段にほかなりません。すなわち、経営者の仕事を「仕組み化」し、そのノウハウを誰でも引き継げるように体系化できれば、「このノウハウどおりやれば、自分でも経営できるだろう」と後継者として名乗りを上げる者が現れることを期待できるはずです。