中小企業でも頻発する「不正絡みのトラブル」
「○○銀行の○○支店で行員の○○が○○億円を横領・・・」などというニュースが、新聞やテレビなどで時折取り上げられることがあります。
そうした社内不正の報道に触れながら、もしのんきに「わが社にはまったく無関係な話だ」などと思っていたら、今すぐ考えを改めたほうがよいかもしれません。従業員の不正は決して大企業だけで起こっているわけではないのです。
「経理の担当者が会社の金を持ち出していた」「保険の解約料をピンハネしていた」などという不正絡みのトラブルは、中小企業でも実は頻繁に起こっています。マスコミで報道されているのは会社側が告訴等をして事件化したもの、つまりは、とりわけ悪質なケースであり、あくまでも氷山の一角に過ぎないのです。
実際、私たちがこれまで中小企業をサポートしてきたなかでも、何度、そのような横領や使い込みに関する話を耳にしてきたか分かりません。とりわけ印象に残っている、ある企業経営者(Fさん)のエピソードを一つご紹介しましょう。
Fさんは、長年の友人であるG氏とともに会社を起こしました。代表取締役としてFさんが経営を切り盛りし、G氏は経理業務を統括するという役割分担のもと二人三脚で順調に売上を伸ばしていきました。
ところが、創立から5年経ったころ、G氏がひそかに不正を働き会社のお金を使い込んでいたことが発覚したのです。
信頼していたパートナーのまさかの”裏切り”にショックを受けたFさんは経営への意欲を失い、事業から足を洗いました。そして失意のまま日本を去り、東南アジアの某国に移住してしまいました。
経理を「見える化」「仕組み化」して不正の芽を摘む
社内不正のトラブルが起これば、経営にとって大変な痛手になりかねません。数百万〜数千万円程度の横領でも、資金力の乏しい中小企業にとっては金銭的に大きなダメージとなるでしょう。また、前述のケースにも示されているように、経営者にもたらされる心理的なダメージも小さくないはずです。
ことに、会社がある程度成長しており、社長が一人で行っていた経理業務を、すでに特定の従業員に任せているような場合には細心の注意が必要です。任せている仕事がどのように処理されているのかチェックする仕組みがまったく存在しないのであれば、業務がブラックボックス化し、不正が行われるリスクは決して小さくありません。
そのようなリスクをなくすためにも、経理インフラをしっかりと整え、「見える化」「仕組み化」を実施し、業務の透明化を行う必要があるのです。