中小企業間でも活発化する「M&A」
前回の続きです。
また、「仕組み化」が行われていれば、自社を売却することも、つまりはM&A(合併・買収)の形で第三者に譲り渡すことも容易になるでしょう。
現在、中小企業でもM&Aが増加しています。例えば、2016年5月2日付日経産業新聞では、中小企業間でもM&Aが活発化している現状を次のように伝えています。
「中小企業のM&A(合併・買収)市場が拡大している。M&A仲介の日本M&Aセンターが4月28日発表した2016年3月期の連結決算は純利益が前の期比23%増の48億円となり、6期連続で過去最高益を更新した。成約件数も24%増の420件と過去最高。『成長戦略として会社を売買する経営者が増えている』と三宅卓社長は市場拡大の要因を分析する。これまでの中小企業のM&Aは、経営者が高齢化し親族や社内に後継者が見つからないときに第三者に事業譲渡するケースが大半だった。だが最近は、人、モノ、カネを供出してくれそうな大手企業や関連技術などを持った企業との連携を目的に、M&Aに踏み切るケースが増えているという。成長のためにファンドや事業会社の資本を受け入れつつ、実質的な経営の主導権は手放さない。こんな選択をする『40~50代の経営者が多い』(三宅社長)」
日本政策金融公庫総合研究所が2016年7月にまとめた「M&Aに取り組む中小企業の実態と課題」でも、図表で示したように、「今後、M&Aを活用する可能性がある」と回答した企業の割合が61.7%に達しています。
M&Aと聞くと「大企業がやることで、わが社にはまったく無関係だ」と思い込んでいる経営者もいるかもしれませんが、このように中小企業が行うことも今やごく当たり前となってきているのです。
[図表]中小企業がM&Aを活用する可能性(アンケート回答)
「仕組み化」されていれば、経営者不在の不安は無用
M&Aの手法としては、大きく次のように、①株式の取得と②事業譲渡という二つのパターンが考えられます。
①株式の取得
一般に株式譲渡の形で実施されます。買い手企業が既存株主から売り手企業の発行株式を買収することにより、経営権を譲り受けます。
②事業譲渡
売り手企業が買い手企業に自社事業を売却します。さらに、事業の一部のみを譲渡するタイプとすべての事業を譲渡するタイプに分類できます。
このいずれの場合でも、M&Aの対象となる企業(売り手企業)で「仕組み化」が行われていなければ、「今の経営者がいなくなったら会社が回らなくなるのでは」という懸念や不安を買い手に抱かせることになるでしょう。
逆に、「仕組み化」が達成できていれば、「誰が経営者になっても問題なく経営できるだろう」と買い手は安心して購入できるはずです。
このように、「仕組み化」を行うことで、中小企業でもM&Aの対象となる可能性を大きく広げることが可能となるのです。後継者に引き継がせる、M&Aの形で売却する――企業経営者として将来の選択肢を増やすという観点からも、「仕組み化」に前向きに取り組んでいくことが望ましいといえるでしょう。