「安易にサイン」は禁物
秘密保持契約書には、前回紹介したような基本的な事項のほか、たとえば下請業者に秘密情報を開示しなければならないようなときには、秘密情報を開示する者の範囲や下請業者が負わなければならない義務の範囲が規定されたりします。
また、秘密情報のコントロールのため、開示する従業員の範囲は必要最小限にしなければならないという条項であったり、秘密情報の返還又は破棄に関する条項が定められたりします。
さらに、ソフトウェアを扱うような企業であれば、リバースエンジニアリングや逆アセンブルを禁止することについても規定されたりします。
このように、秘密保持契約書といっても、企業の業種ややり取りされる情報によって記載される内容が変わってきます。そのため、秘密保持契約書に安易にサインしてしまうのではなく、秘密情報を開示しようとする目的にさかのぼって考えることが重要でしょう。
【こちらも読みたい】
契約書は「合意しなかった内容」も明文化を!/ビジネストラブルを防ぐ、最小化するためのポイント①
秘密保持義務を負う者を一方当事者のみにするには・・・
秘密保持契約書の中には、当事者の双方が署名捺印する契約書方式、当事者の一方が相手方当事者に対して差し入れる差入方式の、2つの方式が見られます。
契約書方式というのは、あとに掲載する「図【書式例】秘密保持契約書(契約書方式の例)」にあるように、両当事者が秘密保持契約の内容に合意し、末尾の記名押印も両当事者になります。当事者が双方がお互いに秘密保持義務を負うときにこの契約書書式を利用するのが通常です。
もっとも、契約書方式であったとしても、【書式例】の第3条「いずれの当事者も」という部分を「甲は」または「乙は」というように一方に限定することで、秘密保持義務を負う者を一方当事者のみとすることもできます。
差入方式というのは、一方の当事者だけで作成する書面で、【書式例】の前文(第1条より上の部分)に代えて「●●会社御中」として、末尾の記名押印が一方当事者だけになります。当事者の一方だけが秘密情報を受領する場合や双方が開示する場合でも一方の当事者だけが秘密保持義務を負うようなケースでは、この差入方式が利用されています。
【こちらも読みたい】
[図表1]契約書方式vs差入方式
[図表2]【書式例】秘密保持契約書(契約書方式の例)