今回は、契約書の具体的なチェックポイントを見ていきます。※本連載は、新日本パートナーズ法律事務所の代表弁護士・初澤寛成氏と、TH総合法律事務所の弁護士・大久保映貴氏による共著、『会社を守る!社長だったら知っておくべきビジネス法務』(翔泳社)の中から一部を抜粋し、経営陣が知っておくべきビジネス関連の法律知識の基本と、会社を取り巻くトラブルへの対応策、および予防法務について説明します。

割引等が発生する場合は、計算式を明確にしておく

皆さんは、「契約書は、小難しい日本語がページいっぱいに並んでいる、読みにくい文書」といったイメージをもたれているかもしれません。確かに、契約書は読みにくいと思います。ですが、「契約書の確認」という観点からすると、その内容に応じて、上の図のようにいくつかのカテゴリーに分けることができます。

 

「どのカテゴリーに属する内容なのか?」という点を意識して読むと、契約書の確認がしやすくなるのではないかと思います。

 

[図表1]契約書の内容的なカテゴリー

 

ポイント①:取引の内容は具体的かつ明確に!

 

最も重要なのが、取引の内容にかかわる部分です。発注する側であれば、どのような物を納品してもらうのか、どのようなサービスを提供してもらうのかということについて、可能な限り具体的な内容にするため相手と協議し、きちんと書面化しておく必要があります。

 

ここがきちんと決められていないと、予定していた納品やサービスの提供が行われておらず、成果物に満足していないのに代金を支払わなければならないということになりかねません。

 

代金を支払っていないのであれば、成果物のやり直しや再提供について交渉の余地がありますが、代金を先払いしてしまっているような場合には、やり直しさせるのにも代金の返還を求めるのにも苦労します。場合によっては、裁判になることもあります。そうなると、多大な時間とコストを要します。

 

受注者側も同様で、どのようなものを納品しなければならないのか、どのようなサービスを提供しなければならないのか、可能な限り具体的な内容にするため相手と協議し、きちんと書面化しておく必要があります。

 

ここがきちんと決められていないと、予定していた納品やサービスの提供をしたにもかかわらず、何度もやり直しを求められたり、予定よりも大幅な追加作業を求められたりすることになりかねません。

 

しかし、成果物について認識の不一致があることは多く、発注者側からすれば、「予定と違うからやり直しは当たり前であり、追加作業ではなく当初から予定されていた作業に過ぎない」という認識で、代金を支払おうとはしません。

 

すると、受注者側としては、代金の支払を受けるためにやり直しや追加作業が発生して赤字になったり、場合によっては受注者側の契約違反を理由に代金が支払われないという事態にもなりかねません。

 

契約の最初から具体的な内容を決められない場合であれば、決まる都度、書面化しておくことが肝要です。

 

ポイント②:金銭の支払を明確に!

 

対価を支払う発注者側、対価の支払を受ける受注者側からしても、金銭の支払は、非常に重要です。

 

確定的な金額、たとえば、「金1,000万円を支払う」といった場合には、問題になることはあまり多くありません。これとは異なり、一定の計算式に基づいて金額を算定する場合には注意が必要です。

 

たとえば、作業代を「1日あたり○○○○円」と定めたような場合、3時間しか作業していない場合でも1日分なのか、逆に12時間も作業をしても1日分なのか等、トラブルになることがあります。こうした場合は、たとえば1時間単位(切り捨て)で定めたりして回避する等の工夫が必要です。

 

また、割引等の減額が発生する場合もトラブルになりがちです。どのような場合にいくら減額するかを、契約書に定めておく必要があります。さらに、取引の内容によっては、交通費等の実費が発生することも多々あります。

 

実費を発注者側受注者側のどちらが負担するかは取引の内容によって様々だと思いますので、どちらが負担するのか、また高額な実費が発生する場合には、相手の承認が必要か等を定めておく必要があります。

「損害賠償の上限」を定めておく

ポイント③:リスクに関する内容を正確に!

 

発注者側の場合には、金銭の支払が主な義務となりますので、想定できないリスクが発生する可能性というのは一般的に低いといえます。そのため、多くの場合、取引に伴う想定しがたいリスクを負うのは受注者側になります。リスクというのは損害賠償です。

 

次の図のように、受注者側の責任で取引の目的が達成できなかった場合には、発注者側は、契約の解除と損害の賠償を請求できるようになります。

 

契約の解除だけであれば金銭が支払われないという負担だけですが、損害の賠償となると、どうなるかはわかりません。どこまでの範囲が損害賠償の対象となるのかについて、できる限り具体的に定めておく必要があります。

 

リスクの把握という観点からすると、何かあった場合の損害賠償の金額を固定して、上限を定めておくこともあります。

 

[図表2]受注者側に責任があった場合、損害賠償を請求される可能性もある

会社を守る! 社長だったら知っておくべきビジネス法務

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初澤 寛成,大久保 映貴

翔泳社

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