取引の初期段階で締結することが多いNDA
当社は、このたびA社が保有する技術を使用して、A社と共同して新技術を開発するというプロジェクトを立ち上げることとなりました。A社の秘密情報であるA社の技術を使用することになりますので、具体的にプロジェクトを開始するにあたり、A社から秘密保持契約書(NDA)を締結してほしいといわれています。これまではなんとなく締結してきましたが、秘密保持契約書を締結する際のポイントは何でしょうか?
秘密保持契約書とは、取引を通じて自社が知り得た相手方の秘密や相手方が知り得た自社の秘密を第三者に無断で開示したり、漏えいしたりしないことをあらかじめ約束するために締結されます。秘密保持契約書はNon—Disclosure Agreement(NDA)といわれたり、Confidential Agreement(CA)といわれたりします。
秘密保持契約書は、初めての取引先と取引する場合や、共同してプロジェクトを立ち上げるとき等に締結されます。また、最終的に取引関係に入らない場合であっても、ディスカッション(交渉、情報交換等)をするために秘密情報を開示することもありますので、この場合にも、秘密保持契約書を締結するということがあります。
このように、取引の初期の段階で、秘密保持契約書を締結することがよくあります。
どのような情報が秘密に該当するのか等、事前確認を
秘密保持契約書に書かれている内容は似通っていることが多いため、秘密保持契約書を締結することに関しては安易に考えがちかもしれません。しかし、これから述べるように、秘密保持契約書にも見るべきポイントがありますので、ポイントをしっかり確認しておきましょう。
ポイント①:秘密情報を開示する側か、受領する側かを確認!
自社が秘密情報を提供するのであれば、相手方に厳しく守秘義務を負わせたいですし、自社が秘密情報を受領するのであれば、緩い守秘義務にしておきたいとなるでしょう。
そこで、まずは対象となる取引において、自社が秘密情報を提供するほうになるのか、逆に自社が秘密情報を受け取るほうになるのかを確認しておく必要があります。もちろん、秘密情報を提供する側、受領する側どちらにも当てはまる場合もあり得ます。
ポイント②:秘密情報を開示する目的を確認!
次に、どのような目的のもと、秘密情報を開示するのかを確認します。たとえば、あるプロジェクトのために開示した秘密情報を相手方が違う目的のために使用してしまったとしたら、秘密情報を開示した企業側は、ビジネス上、重大な影響(損害)を被ってしまうおそれがあります。
そのため、秘密保持契約では多くの場合、「秘密情報を第三者に開示又は漏えいしてはならない」とされるとともに、「秘密情報を本契約の目的以外のために使用してはならない」等とされています。
したがって、秘密情報の開示の目的について明確にしておくのが望ましいでしょう。
ポイント③:どのような情報が秘密情報になるのかを確認!
「秘密保持契約書」ですので、どのような情報を秘密として保持しなければならないのかを確認しておかなければなりません。
企業間の取引でやり取りされる秘密情報は、多岐にわたることが多いものです。そのため、細かく秘密情報を定めてしまうと秘密情報の範囲から外れてしまうことがあるから、多くの場合、包括的に定められることが多いと思われます。具体的には、「本契約の遂行により知り得た相手方の技術上または営業上その他一切の業務上の情報」等と規定されているような場合です。
しかし、これでは結局どのような情報が秘密情報になるのかがわからなくなってしまいます。
上記の定め方が悪いわけではありませんが、秘密情報を受領する側からすると、あとになって「あの情報は秘密情報だった」といわれないために、「開示当事者が秘密であることを明示して開示した情報」等とすることも考えられます。
もっとも、秘密情報を開示する側からすると、これだと「秘密であることを明示して開示した情報」しか秘密情報に含まれず、「知り得た情報」が除かれてしまうことになります。
どのような方法で情報をやり取りするのかによっても、秘密保持契約書の定め方は変わりますので、注意する必要があるでしょう。
[図表1]NDAでは秘密情報に含まれる内容を確認
ポイント④:秘密保持の期間を確認!
秘密保持契約書を締結するうえでは、どの程度の期間、秘密保持義務を負うのかということを確認しておかなければなりません。
秘密保持契約の期間中(取引の期間中)は、当然、秘密保持義務を負っています。では、取引が終わったあとはどうでしょうか? 取引が終わる前日に受領した秘密情報は、取引が終わってすぐに第三者に開示することができるものなのでしょうか?
秘密保持の期間については、契約終了後、1年から5年間程度、秘密保持義務を負い続けるとされていることが多いと思われます。秘密保持の期間をどの程度にするのかは、やり取りされる秘密情報がどのような情報なのかによると考えられます。
つまり、技術の進歩が速く、1年、2年程度で陳腐化するような秘密情報であれば、その程度の期間を秘密保持の期間として定めておくことになりますが、個人情報のように陳腐化するような秘密情報でなければ、取引終了後もずっと秘密保持義務を負うということも考えられます。
このように、やり取りされる秘密情報がどのような情報なのかをよく確認したうえで、秘密保持の期間を定める必要があるでしょう。
[図表2]秘密保持期間の決め方の例