契約では、合意した顧客要求事項を「すべて明文化」
もちろん、トラブルが発生しないことが最良ですが、仮にトラブルが起こったとしても、被害を最小化するためにはどこに着眼すればよいかを、①〜④のステップごとに見ていきます。
①契約時
当たり前のことですが、契約内容を明確にすることです。そのために、合意した顧客要求事項をすべて明文化します。顧客はとかく過度な要求をしがちです。一方製作会社の営業は、受注したいがために、できもしないこと、実績のないことでも受け入れることがあります。
しかし、これを避けるために営業部門は技術部門と相談して、無理と判断されれば、別案を顧客に提案するべきです。
通常、双方が合意した要求事項は契約に盛り込みますが、合意しなかった内容が曖昧な状態のまま放置されることがあります。これが後になって、トラブルの原因になるかもしれません。
よって、次のとおり、合意した内容だけでなく、合意しなかった、あるいは合意できなかった事項も、きちんと明文化していただきたいと思います。
●契約範囲(Scope of Work)実行する内容、または製品に織り込む仕様
●契約範囲外(Out of Scope)実行しない内容、または製品に織り込まない仕様
この2つは、製品という形のあるものだけでなく、サービスのように形として見えない商品も含まれます。
過去の製品と今回の製品の「共通点・相違点」を明確に
②設計時
一品物とはいっても、初めて受注する新規性の高い製品を除いて、最初から新たに設計することはほとんどありません。通常は過去受注した類似製品の図面を流用します。これは契約書作成でも同じことがいえます。
我々のビジネスでは、設計に限らず、ほかの職種でも過去の書類を流用することが多くあります。ここで、リスクを見つけて対処すれば、後で対応するより、コストと時間を少なくすることが可能です。
そのときの注意点は、流用する過去の製品と今回受注した製品の「共通点」と「相違点」を項目ごとに箇条書きにし、明確にすることです。
相違点は、製品だけに着目するのでなく、顧客情報についても記述してください。仮に過去と同じ製品であっても顧客が異なる場合、その顧客の特徴を記述することです。たとえば、ある顧客は外観に神経質であるということが分かっていれば、事前に細かな傷の検査を実行する等の対応が可能となります。
この話は次回に続きます。