遺品整理で知った母の暮らし
澄江さんは、毎月の収入と支出を大学ノートに細かく記録していました。
年金の入金額、食費、光熱費、医療費。直樹さんからの仕送り4万円も、毎月欠かさず書き込まれています。
そのなかに、直樹さんが知らなかった支出がありました。
「家事援助 6,000円」「通院タクシー 4,800円」「配食サービス 8,400円」
日付をさかのぼると、こうした支出は数年前から増えていました。
澄江さんは足腰が弱くなってから、掃除や買い物を手伝ってもらうために、地域の事業者へ家事援助を依頼していたのです。通院時にはタクシーを使い、体調の悪い日は配食サービスも利用していました。
直樹さんは、母がそこまで生活に不便を感じていたことを知りませんでした。
「電話ではいつも元気そうでしたし、家も片付いていたので、全部自分でできていると思っていました」
ノートには、家事援助などの支払いを済ませたあと、残高が数千円しかない月もありました。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯の月平均可処分所得は11万8,465円、消費支出は14万8,445円。平均で月約3万円の不足が生じています。
澄江さんの場合も、月10万円ほどの年金だけでは、生活費に加えて家事援助や通院費用を賄うのは難しい状況でした。
さらに家計簿の最後のページには、直樹さんに宛てた短い言葉が残されていました。
「おかげで、この家で暮らすことができました。ありがとう」
直樹さんは、その一文を見て、母が仕送りを断った最後の電話を思い出したといいます。
「もっと早く、どんな暮らしをしているのか聞けばよかった。母は自分でできなくなったことを、私には言いたくなかったのかもしれません」
母の預金は、葬儀費用などを支払えば多くは残らない金額でした。直樹さんは家計簿を保管し、妻にも母が利用していたサービスのことを伝えました。
「毎月4万円を送るのは楽ではありませんでした。でも、そのお金で母が自宅で暮らせていたと知って、続けてよかったと思いました」
高齢の親への仕送りは、日々の食費や光熱費だけでなく、家事援助や移動手段の確保にも役立ちます。親が「大丈夫」と話していても、生活の負担が増えている場合があります。離れて暮らす親を支える際には、金銭的な援助に加え、どのような支援を利用し、日常生活で何に困っているのかを定期的に確かめることが大切です。
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