「しばらく泊まるだけだと…」娘と孫が突然やってきた日
72歳の敏夫さん(仮名)は、同い年の妻・久美子さん(仮名)と2人で暮らしています。夫婦の年金収入は合わせて月約20万円。住宅ローンを完済した4LDKの一戸建てで、穏やかな老後を送っていました。
朝は庭の手入れをし、午後は買い物や散歩へ。夕食後には好きなテレビ番組を見ながら過ごすのが、夫婦の日課でした。
そんな生活が一変したのは、ある土曜日の夕方です。
玄関のチャイムが鳴り、ドアを開けると、40歳の娘・彩香さん(仮名)が小学5年生と小学2年生の子どもを連れて立っていました。
足元には、大きなキャリーバッグが2つ。
「お母さん、今日からここに住むね」
突然の言葉に、久美子さんは驚きました。
「どうしたの? 何かあったの?」
彩香さんは夫との関係が悪化し、しばらく距離を置くことにしたと説明しました。
「子どもたちもいるし、今は落ち着いて話せない。とりあえず実家にいさせてほしい」
娘の疲れ切った様子を見て、敏夫さん夫婦はそれ以上詳しく尋ねず、空いていた2階の部屋を使わせることにしました。
当初は、数週間もすれば今後の生活が決まるだろうと考えていたそうです。ところが1ヵ月が過ぎても、彩香さんが家を出る様子はありません。
娘はパート勤務を続けていましたが、収入は月約10万円。夫とは別居中で、生活費についての話し合いも進んでいませんでした。
子どもたちの学校生活をなるべく変えたくないという事情もあり、実家から以前の学校まで車で送迎する日が続きます。
久美子さんは、朝食と夕食を5人分作るようになりました。洗濯物は増え、買い物の回数も週2回からほぼ毎日に。
「孫はかわいいですし、娘が困っているなら助けたい。でも、毎日となると体がついていかなくて」
夕方には孫の宿題を見て、娘が帰宅するまで夕食の準備を進めます。夫婦だけなら簡単に済ませていた昼食も、学校が休みの日には人数分を用意する必要がありました。
敏夫さんが気になったのは、家計の変化です。
夫婦2人で暮らしていた頃、毎月の生活費は約19万円。多少の不足が出る月もありましたが、年金を中心にやりくりできていました。
しかし同居が始まってからは食費と光熱費が増え、生活費は月約25万円に。年金との差額を貯蓄から補うようになったのです。
「娘も大変なのはわかる。でも、このまま何ヵ月も続くのかと思うと、先が見えなくなりました」
