「助かるよ」の言葉がうれしくて…3年間続けた週末の家事
73歳の節子さん(仮名)は、夫と離婚して以来、一人暮らしを続けています。年金収入は月約18万円。住宅ローンを完済したマンションで、生活費をやりくりしながら穏やかに暮らしていました。
節子さんには、42歳の娘・美咲さん(仮名)がいます。美咲さんは会社員の夫と、小学5年生の長女、小学2年生の長男との4人暮らし。夫婦共働きで、平日は帰宅が遅くなることも少なくありません。
3年前、美咲さんが仕事を増やした際、節子さんは家事を手伝うようになりました。
「土曜日に掃除と洗濯を手伝ってあげようか」
最初は月に1、2回のつもりでしたが、娘から「本当に助かる」と感謝され、いつしか毎週土曜日に通うのが習慣になったのです。
節子さんは午前10時頃に娘の家へ到着すると、洗濯物を取り込み、掃除機をかけ、冷蔵庫の中身を確認します。夕食用のおかずを2、3品作り、午後には孫たちとおやつを食べるのが楽しみでした。
「娘が仕事で忙しいのはわかっていましたし、私も家にいるより、誰かの役に立てるほうがうれしかったんです」
交通費は往復約800円。食材を買い足すこともあり、月に5,000円ほどを負担していましたが、節子さんは特に気にしていませんでした。
ところが最近になって、娘の反応が少しずつ変わっていきます。
ある土曜日、節子さんが冷蔵庫にあった野菜で煮物を作ると、美咲さんは困った顔をしました。
「お母さん、その野菜、明日の料理に使う予定だったんだけど」
別の日には、洗濯物をたたんで子ども部屋にしまったところ、孫から「自分で片付けることになってるのに」と言われます。
節子さんは、そのたびに謝りました。
「よかれと思ってやったことなんですけど、最近は何をしても、かえって迷惑なのかなと思うことが増えて……」
それでも、毎週の訪問は続けていました。手伝いをやめたら、娘の負担が増えると思っていたからです。
そんなある日、いつものように週末の予定を尋ねると、美咲さんから思いがけない返事がありました。
「お母さん、もう毎週来なくていいから」
節子さんは、しばらく言葉が出なかったそうです。
