「庭のある家で暮らす」マンションを売却して始めた郊外生活
66歳の俊明さん(仮名)は、同い年の妻・由紀子さん(仮名)と2人暮らし。夫婦の年金収入は合わせて月約22万円です。
以前は、都内の駅から徒歩7分ほどの分譲マンションに住んでいました。子どもが独立してからも住み続けていましたが、俊明さんが定年退職した頃から、郊外への住み替えを考えるようになります。
「仕事を辞めたら、庭のある家で野菜を育てたいと思っていたんです。妻も花が好きなので、ちょうどいい機会だと考えました」
夫婦が選んだのは、都心から電車で約1時間半の郊外にある、築30年の一戸建てです。
敷地は約200平方メートル。4LDKの建物に庭が付いており、価格は約1,600万円でした。
最寄り駅までは車で約15分。近所には小さな商店があるものの、大きなスーパーや総合病院へ行くには車が必要な地域です。
それでも、夫婦は不便さをあまり気にしていませんでした。
「私も妻も運転できますし、買い物は週に何度かまとめて行けばいいと思っていました」
マンションは約4,200万円で売却でき、諸費用を差し引いた手取りは約4,050万円。新居の購入費用に加え、給湯器の交換や室内の補修などに約250万円を使いました。
住み替え前の貯蓄は約2,500万円。購入費用と補修費を支払っても、売却代金が残るため、経済的には余裕があると考えていました。
引っ越し直後は、念願の郊外生活を楽しんでいたそうです。
俊明さんは庭の一角に家庭菜園を作り、由紀子さんは季節の花を植えました。朝は鳥の声で目が覚め、休日には近くの直売所へ出かけます。
「最初の数ヵ月は、本当に引っ越してよかったと思っていました」
ところが、夏を迎える頃から、生活の負担が少しずつ増えていきました。
庭の雑草は想像以上の速さで伸び、炎天下での草取りは体にこたえます。築30年の建物も、雨戸の動きが悪くなったり、浴室の換気扇が故障したりと、小さな不具合が続きました。
さらに、由紀子さんが車の運転を控えるようになったことも大きな変化でした。
「知らない道を運転するのが怖くなってしまって。結局、買い物も病院も夫に乗せてもらうことが増えたんです」
そして引っ越しから8ヵ月後、夫婦の生活を見直すきっかけとなる出来事が起こります。
