(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期の住み替えでは、買い物や通院の利便性に加え、子どもとの距離を重視する人もいます。離れて暮らす家族の近くに住めば、困ったときに助け合え、孫とも頻繁に会えると期待することもあるでしょう。しかし、住む場所が近くなったからといって、交流の機会が必ず増えるとは限りません。長年暮らした土地を離れた後、思い描いていた生活との違いに戸惑うケースもあるようです。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「これからは、いつでも会えるね」娘一家の近くへ引っ越し

75歳の節子さん(仮名)は、2年前に地方の一戸建てを売却し、娘一家が暮らす街へ引っ越しました。

 

夫は8年前に亡くなり、現在は一人暮らし。自身の老齢年金と遺族厚生年金を合わせて、月約17万円を受給しています。

 

以前は夫と40年近く暮らした家に住んでいましたが、庭の手入れや建物の維持管理が負担になり、住み替えを考えるようになったそうです。

 

そんなとき、44歳の長女・真由さん(仮名)から声をかけられました。

 

「お母さん、こっちに引っ越してきたら? 何かあったときも安心だし」

 

真由さんは夫と小学4年生の長男、小学1年生の長女の4人暮らし。節子さんの家からは電車を乗り継いで約2時間の場所に住んでいました。

 

節子さんは、娘一家の近くに住めることを素直に喜んだといいます。

 

「孫たちが小さいころは、会うだけで一日がかりだったんです。近くに住めば、学校行事にも行けるかなと思いました」

 

以前の家は約2,400万円で売却。新居には、娘一家の自宅から徒歩15分ほどの場所にある中古マンションを選びました。

 

購入費用と諸経費は合わせて約2,100万円。引っ越し後も預貯金は約900万円残り、毎月の生活費も年金の範囲で賄える見込みでした。

 

駅やスーパーが近く、暮らしやすい環境です。

 

引っ越した直後は、真由さん一家が荷ほどきを手伝いに来てくれました。

 

「これからは、いつでも会えるね」

 

孫たちにそう話しかけると、2人とも笑顔でうなずいてくれたそうです。

 

ところが新生活が落ち着くにつれ、節子さんは思っていたほど娘一家と会えないことに気づきました。

 

真由さん夫婦は共働きで、平日は帰宅が遅くなりがちです。週末も子どもたちの習い事や友達との約束があり、家族で出かけることも少なくありません。

 

「最初は、近くに住んだら週に一度くらい会えると思っていたんです。でも実際は、月に一度会えればいいほうでした」

 

それでも節子さんは、学校行事には声をかけてもらえると期待していました。昨年の秋、孫の運動会が近づいたころ、真由さんに尋ねてみたそうです。

 

「運動会はいつなの? 私も見に行っていいかしら」

 

すると真由さんは、少し言いにくそうに答えました。

 

「今年は私たちだけで行くつもりなの。ごめんね」

 

学校から祖父母の参加を禁止されているわけではありません。ただ真由さん夫婦は、子どもたちの写真や動画を撮りながら、親子だけで過ごしたいと考えていたようです。

 

節子さんは「そうなのね」と答え、それ以上は聞けませんでした。

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