(※写真はイメージです/PIXTA)

親が高齢になると、年金だけでは生活費が足りず、子どもが仕送りで支える家庭もあります。毎月決まった金額を送っていても、そのお金が実際に何に使われているのか、詳しく聞く機会は少ないかもしれません。親は子どもに心配をかけまいとし、子どもも親の生活に踏み込みすぎないよう気を遣う。そんな親子の間で、長年伝えられなかった事情が、親の死後に明らかになることもあります。 ※本記事に掲載している事例は、プライバシー保護および情報の一般化のため、実際の相談事例をベースに一部の数値や設定を変更・再構成したモデルケースです。

「これで少しは楽になるだろう」毎月4万円を送り続けた息子

55歳の会社員・直樹さん(仮名)は、87歳の母・澄江さん(仮名)に、毎月4万円を仕送りしていました。

 

父は20年ほど前に亡くなり、澄江さんは地方都市にある持ち家で一人暮らしを続けていました。年金収入は月約10万円。住宅ローンは完済していましたが、固定資産税や光熱費、食費などを支払うと、余裕のある生活とはいえません。

 

仕送りを始めたのは、今から約10年前のことです。

 

当時、澄江さんは自宅の給湯器が故障し、交換費用を捻出するために貯金を取り崩していました。直樹さんが生活状況を尋ねると、母は少しためらいながら答えたそうです。

 

「毎月の暮らしは何とかなるけど、急な出費があると困るね」

 

直樹さんは妻と相談し、毎月4万円を送ることにしました。

 

住宅ローンを返済しながら子ども2人を育てていたため、決して小さな負担ではありません。それでも、母が安心して暮らせるならと、仕送りを続けてきました。

 

澄江さんは毎月、振り込みを確認すると電話をかけてきました。

 

「いつもありがとう。助かっているよ」

 

直樹さんが「足りなくなったら言って」と伝えても、母が追加の援助を求めることはありませんでした。

 

実家を訪れるのは年に2、3回ほど。澄江さんは年齢のわりに元気で、家の中もきれいに片付いていたため、直樹さんは一人暮らしを続けられると思っていたそうです。

 

ところが、87歳になった澄江さんは、体調を崩して入退院を繰り返すようになります。直樹さんは実家近くの病院へ通い、退院後の生活についても母と話し合っていました。

 

そんなある日、澄江さんから電話がかかってきました。

 

「今までありがとう。もう十分だよ。これからは自分たちのためにお金を使ってね」

 

直樹さんは「そんなこと気にしなくていいから」と返しましたが、母は何度も礼を言ったそうです。

 

それが、親子で交わした最後の電話になりました。数週間後、澄江さんは入院先の病院で亡くなりました。

 

葬儀を終えた直樹さんは、実家の片付けを始めます。そして、居間の棚に残された家計簿を見つけたのです。

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