「新しい会社に売上を移せば」と考えた社長
そして、今回の事例のなかでも特に生々しいのが、新しい会社を使って売上を移していたケースである[図表4]。
税務調査の後、関係する税理士から「財産を差し押さえられる可能性がある」と伝えられた滞納法人の代表者は、会社の銀行口座から現金を引き出し、自宅で保管していた。
さらに代表者は、自らが実質的に支配する新しい法人を設立する。
ここから、資金の流れが変わる。
本来であれば滞納法人が受け取るはずだった解体工事の代金について、代表者は取引先に対して、新しく設立した法人へ支払うよう求めた。そして、その売上を新法人が受け取っていた。
滞納している会社に売上を入れなければ、会社の財産を増やさずに済む。新しい会社に売上を入れれば、事業を続けながら滞納会社の財産を少なくできる――。そう考えたとしても不思議ではない。
しかし、国税当局はその資金の流れを追った。代表者が滞納処分を免れるために財産を隠すなどしたと判断し、代表者を滞納処分免脱罪で告発した。
令和7年度に、滞納処分免脱罪に関して告発された事例は9件、対象となった者は14人・法人。前年度の6件、8人・法人から増加している。
ここでは、「新会社をつくったこと」そのものが問題なのではない。問題になったのは、滞納処分を免れるために、滞納法人が本来受け取るべき売上を新法人に移すなどしたと国税当局が判断した点にある。

