国税当局が見ているのは「財産の行方」
こうして4つの事例をたどってみると、共通するものが見えてくる。
会社の補償金が社長への返済に変わった。会社の資金が代表者の私的な用途に使われた。国外に出た納税者について外国の税務当局に徴収が依頼された。そして、新会社をつくって売上の振込先を変えた。
いずれも、単に「税金を滞納している」というだけの話ではない。
国税当局が追っているのは、その会社や納税者が保有していた財産が、いつ、どこへ、誰に、どのような理由で移ったのかという資金の流れだろう。
たとえば、会社が代表者から借り入れをしていて、その返済を行うこと自体は通常の取引としてあり得る。新しい会社を設立し、事業を移すことも、それだけで違法になるわけではない。
しかし、税金の滞納が発生している状況で、会社の財産を意図的に減らしたり、差し押さえを避けるために売上の受取先を変えたりすれば、事情は変わってくる。
財産を「どこに置いたか」だけでなく、「なぜそこに移したのか」まで見られるのである。
AIまで使って滞納者への接触を効率化
こうした滞納整理を支えているのが、従来からの調査や差し押さえだけではない。
国税庁は、滞納者への電話、臨場、文書といった接触方法について、どの方法が効果的かを予測するAIの活用を進めている。さらに、電話がつながりやすい曜日や時間帯を予測する取り組みも行っている。
加えて、生成AIを使い、個々の滞納事案に関する処理記録を要約する取り組みも進めている。滞納事案の優先順位付けや、担当者間の引き継ぎなどに活用するためだ。国税当局による滞納整理は、「税務署から督促状が届く」といった従来型のイメージだけでは捉えきれなくなっている。
どの滞納者に、いつ、どの方法で接触するのが効果的なのかをデータから予測し、そのうえで財産の状況や過去の対応記録を確認していく。さらに必要となれば、訴訟や第二次納税義務の賦課、刑事告発、海外の税務当局との連携まで行う。
