「今年は行けない」娘から届いたお盆前の連絡
「お母さん、ごめん。今年のお盆もそっちには行けそうにない」
長女の真由美さん(仮名・48歳)から電話があったのは、7月に入って間もないころでした。
節子さん(仮名・74歳)は、2年前からシニア向け分譲マンションで一人暮らしをしています。年金は月約15万円。夫を7年前に亡くし、以前住んでいた戸建てを売却した際の資金など、預貯金は約1,500万円あります。
戸建てを手放したきっかけは、庭の管理や階段の上り下りが負担になったことでした。
現在のマンションはバリアフリーで、緊急時にはスタッフへ連絡できます。食堂や大浴場があり、館内では体操や書道などの催しも開かれていました。
「一人で家にいるより、こっちのほうが安心だよ」
住み替えには、真由美さんも賛成していました。
節子さん自身も、新しい住まいに大きな不満はありません。ただ、入居して初めて迎えた前年のお盆は、娘一家が旅行へ出かけたため一人で過ごしました。
「来年は顔を出すね」
そう言われていたため、今年は孫たちに会えるものと思っていたといいます。ところが、真由美さんの夫の仕事と高校生の孫の部活動が重なり、帰省できなくなりました。
「無理しなくていいよ。みんな忙しいんでしょう」
節子さんはそう答えました。電話を切ったあと、冷蔵庫に用意していた孫の好きなジュースや菓子を見て、少し寂しくなったといいます。
夏休み期間中もマンション内には人がいました。ただ、入居者の中には子どもの家へ出かける人や、家族が迎えに来る人も多く、普段より館内は静かでした。
食堂で顔を合わせた女性から、
「うちはお盆、息子が迎えに来るの」
と聞いたとき、節子さんは「いいわね」と答えました。自室へ戻ってから、なぜか涙が出てきたそうです。
「娘が悪いわけじゃないんです。来られない事情も分かっています。でも、『今年も一人か』と思ったら、急に寂しくなってしまって」
内閣府『令和7年 人々のつながりに関する基礎調査』では、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、何らかの社会活動に参加している人で2.1%、特に参加していない人では6.5%でした。社会との接点を持つことと孤独感には関連がみられます。
