(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者向けの住まいには、スタッフがいたり、入居者同士が利用できる共用スペースが設けられていたりするところもあります。しかし、そうした環境に移ったからといって、自然に人との交流が生まれるとは限りません。周囲に人がいることと、誰かと時間を過ごすことは、必ずしも同じではないようです。

「ここなら一人でも安心」住み替えて初めて迎えた休日

美智子さん(仮名・72歳)は、年金月約16万円で一人暮らしをしています。

 

70歳までパート勤務を続け、退職を機に長年暮らした一戸建てを売却。その代金を充てて、中古のシニア向け分譲マンションを購入しました。現在の預貯金は約1,500万円です。

 

住み替えを考えた理由は、広い家の管理が負担になってきたことでした。

 

2階にはほとんど使わない部屋があり、庭の草取りや落ち葉の掃除も必要です。最寄りのスーパーまでは徒歩20分ほどかかりました。

 

「まだ元気だけど、80歳になってから家を片づけて引っ越すのは大変だろうなと思ったんです」

 

選んだマンションには共用ラウンジがあり、日中はスタッフもいます。駅やスーパーにも近く、「ここなら一人でも安心して暮らせそう」と感じました。

 

実際、生活は便利になりました。

 

買い物は歩いて済ませられ、庭の手入れもありません。平日にラウンジへ行けば、顔見知りになった住人と「今日は暑いですね」「買い物ですか」と言葉を交わすこともあります。

 

それでも、暮らし始めて半年ほどたったころ、美智子さんには気になる時間ができていました。

 

土曜日と日曜日です。

 

平日はスタッフや清掃員の姿があり、住人も出入りしています。ところが休日になると、マンション内は静かになります。

 

美智子さんには40代の娘と息子がいますが、それぞれ家庭を持ち、車で1時間ほど離れた場所に住んでいます。

 

以前は月に1度ほど会っていました。ただ、孫が中学生と高校生になってからは、部活動や塾などで家族全員の予定が合いにくくなり、2~3ヵ月会わないことも珍しくなくなりました。

 

ある日曜日、美智子さんは朝から部屋を片づけ、昼食を済ませました。午後になっても特に予定はありません。

 

廊下から話し声が聞こえ、しばらくすると隣の部屋のインターホンが鳴りました。玄関先から「おばあちゃん、来たよ」という子どもの声が聞こえてきます。

 

美智子さんは自分の部屋のインターホンを見ました。

 

「今日も、うちは鳴らないんだなって。平日は何とも思わないのに、日曜日になると急に気になるんですよ」

 

内閣府『令和5年度 高齢者の住宅と生活環境に関する調査』によると、65歳以上で親しくしている友人や仲間が「ほとんどいない」「全くいない」と答えた人は合わせて16.1%でした。

 

美智子さんにも友人はいます。それでも、休日に気軽に「今から会おう」と誘える相手はほとんどいませんでした。

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