「5,000万円あるんだから」退職後に始めた海外旅行
「これだけ貯めたんだから、少しくらい使わないともったいないよ」
70歳の誕生日を迎えた浩一さん(仮名)は、妻の典子さん(仮名・68歳)にそう話しました。
浩一さんは65歳で定年を迎えた後も再雇用で働き、69歳で完全に退職。退職金を含め、夫婦の金融資産は約5,000万円ありました。
住宅ローンを完済した戸建てに住み、夫婦の年金は合わせて月約27万円です。子どもはすでに独立しています。
現役時代、浩一さんには一つ心残りがありました。海外旅行です。
会社員時代は長い休暇を取りにくく、海外へ出かけても近場で数日程度。退職したらヨーロッパをゆっくり旅行したいと考えていました。
最初に選んだのは、10日間ほどのイタリア旅行でした。
航空券は「長時間だから」とビジネスクラスを選択。ホテルも駅から近く、移動しやすい場所にしました。食事や現地ツアーも含め、夫婦で約150万円を使いました。
「昔なら150万円なんて旅行に使えなかった。でも、5,000万円から考えれば3%でしょう」
帰国から4ヵ月後には、今度はスペインとポルトガルへ。こちらも約130万円かかりました。さらに年末にはアジアへ出かけ、国内旅行にも数回行きました。
1年間の旅行関連支出は、合計で約400万円になっていました。それでも浩一さんは、それほど気にしていませんでした。
「毎年400万円使うわけじゃない。70代前半の元気なうちだけだから」
退職後に旅行や趣味へお金を使いたいと考える高齢者は少なくありません。内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』によると、今後優先的にお金を使いたいものとして、「趣味やレジャー(旅行等)の費用」を挙げた人は32.4%でした。「自分や配偶者あるいはパートナーの医療・介護の費用」(47.5%)、「食費」(43.2%)に次いで3番目に高い割合となっています。
ところが、退職から1年ほど経ったある日、典子さんが預金残高を確認して言いました。
「ちょっと待って。旅行以外にも、かなり減ってない?」
浩一さんも通帳やカードの明細をまとめ直しました。そこで初めて、旅行とは別に積み重なっていた支出の大きさに気づいたのです。
