定年を迎えたら、しばらく仕事を離れて趣味や旅行を楽しみたい――。そんな「セカンドライフ」を思い描く人は少なくありません。ところが、いざ再び働こうとしたとき、現役時代の経験や肩書が思わぬ壁になることがあります。退職金があれば大丈夫、と考える前に知っておきたい現実とは。
「仕事なんていくらでもある」〈退職金2,500万円〉60歳・元部長、趣味三昧の1年後、再就職を目指した「ハローワーク」で膝から崩れ落ちたワケ ※写真はイメージです/PIXTA

定年男性「1年くらい遊んでも大丈夫」

「60歳になったら、しばらく仕事から離れたい」

 

そう思っている人は少なくないでしょう。退職金や貯蓄があれば、数年間は働かなくても大丈夫――。

 

実際に行動に移したのが、東京都在住の樋口誠さん(60歳・仮名)。国内大手企業で30年近く働き、最後の役職は営業部長。60歳の定年を迎えた際の退職金は2,500万円。預貯金を含めた金融資産は3,000万円ほどありました。

 

さらに住宅ローンも完済済み。妻はパートで働き、月8万円ほどの収入がありました。それに対して、夫婦2人の生活費は、平均月27万円ほど。

 

「仕事は好きです。ただずっと張り詰めたなかでやってきたので、少し休みたい……ただそれだけでした」

 

雇用形態とともに働き方が変わるものの、同期のほぼ全員が再雇用で働き続けるなか、樋口さんはひとり、定年で会社を去りました。

 

厚生労働省が公表した令和7年「高年齢者雇用状況等報告」によると、全国の企業の99.9%が65歳までの雇用確保措置を実施。その内訳として、「継続雇用制度(再雇用など)の導入」により雇用を確保している企業は65.1%に上り、依然として定年を60歳とする企業も62.2%を占めています。

 

多くの企業で「60歳定年後の再雇用」が標準的な選択肢となっており、実際に定年を迎えた人の多くがそのまま会社に留まるのが主流。このような状況のなか、樋口さんが選んだのは「一度完全に仕事を離れる」という、かなりの少数派となる決断でした。

 

退職後は、朝の時間を気にする必要がありません。しばらく“暇”を楽しんだ後、好きなゴルフに行きました。平日に妻と旅行にも出かけ、現役時代には買わなかった高級な自転車も購入しました。

 

とにかく、現役時代にはできなかったことをすべてやろうと思っていたといいます。