「真珠の耳飾りの少女」を経済史から見る
フェルメールは現在も非常に人気の高い画家です。
大学教員の有吉玉青さん(作家・有吉佐和子さんの娘)は、フェルメールの絵画を訪ね歩いた紀行エッセイ『恋するフェルメール 37作品への旅』(講談社文庫)を出版しています。フェルメールについては、美術史、人物、構図、光の表現など、さまざまな角度から論じることができます。
しかし、「真珠の耳飾りの少女」を見るとき、その作品だけを見るのではなく、その作品が生まれた17世紀オランダの社会にも目を向けてみると、また違った景色が見えてくるのではないでしょうか。
イタリアで商業の発展を背景に複式簿記が発達し、やがて経済の中心がオランダへ移る。オランダでは商業がさらに発展し、それに対応して簿記の仕組みも変化する。
そして、その同じ時代に、フェルメールやレンブラントらが活躍するオランダ絵画の黄金時代が生まれました。
経済が発展すれば、商業が発展します。商業が発展すれば、それを記録・管理する簿記も発展します。そして、経済的な繁栄は、人々の生活や文化、さらには絵画の世界にも影響を与えます。
そう考えると、「真珠の耳飾りの少女」は単なる一枚の絵ではなく、17世紀オランダという経済社会の大きな変化の中から生まれた作品として見ることもできます。
絵画の背景には、商業があり、金融があり、そして、それらを記録する簿記があります。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を、簿記という小さな窓から眺めてみる。そこから見えてくるのは、17世紀オランダの華やかな絵画だけではありません。イタリアからオランダ、そしてイギリスへと移っていく経済の中心と、それに合わせて変化していった簿記の歴史でもあるのです。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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