経済の繁栄は「絵画」も変えた
17世紀のオランダでは、商業や金融の発展によって富を蓄積した市民層が形成されました。
それまで絵画の主要な顧客といえば、王侯貴族や教会などが中心でした。しかし、経済的に豊かになった商人や市民も、絵画を購入するようになります。
こうした新しい顧客層の存在は、絵画の題材にも影響を与えました。
宗教画や王侯貴族を描いた作品だけではなく、商人や市民の日常生活、室内の風景、手紙を読む人物など、当時の市民社会を感じさせる作品が数多く描かれるようになりました。
フェルメールの作品にも、こうした17世紀オランダの社会が反映されています。つまり、オランダの経済的繁栄は、商業活動を活発にしただけではありません。
商業活動の拡大は簿記の発展を促し、一方で経済的に豊かになった市民層は、絵画を支える新たな市場を形成しました。
経済の繁栄は、簿記と絵画という、一見まったく異なる二つの世界にも影響を与えたのです。
フェルメールと簿記を結ぶ「17世紀オランダ」
フェルメール自身が簿記の発展を意識して絵を描いていたわけではありません。しかし、フェルメールが生きた社会の経済状況と、その時代の文化が無関係だったとは考えにくいでしょう。
フェルメールは、オランダが独立を確立し、商業・海運・金融を発展させ、ヨーロッパ有数の経済力を持つようになった時代を生きました。その社会には、世界各地の商品を取り扱う商人がおり、その取引を記録する必要がありました。
そして、商業によって富を得た人々の中には、絵画を購入する人々もいました。
一方には、商業活動を正確に記録するための簿記があり、もう一方には、商業によって生み出された富を背景に発展する絵画がありました。両者を直接結びつけることはできませんが、その背後には同じ「経済社会の発展」があります。
