「この家、二人には広すぎるね」72歳で決めた住み替え
「この家、二人で使ってるのって、ほとんど1階だけだよね」
妻の恵子さん(仮名・72歳)がそう話したのは、夫の紀夫さん(仮名・73歳)と今後の住まいについて考えていたときでした。
夫婦の年金は合わせて月約26万円。預貯金は約2,800万円あり、30年以上暮らした戸建ての住宅ローンも完済しています。
2人の子どもはすでに独立し、2階にある子ども部屋はほとんど使っていませんでした。それでも掃除は必要で、庭の草取りや植木の剪定もあります。数年前からは外回りの作業を業者へ頼むことも増えていました。
「今はできても、5年後、10年後はどうだろうって考えるようになったんです」
夫婦には、以前から海の近くで暮らしてみたいという希望もありました。
ただ、観光地のような場所や、車がなければ買い物にも行けない地域を選ぶつもりはありませんでした。いくつかの地域を訪れ、最終的に選んだのは、海を望める地方都市の駅近マンションです。
駅までは徒歩10分ほど。スーパーやドラッグストア、内科も歩いて行ける範囲にあり、電車に乗れば大きな病院にも行けます。
「海は好き。でも、毎日必要なのはスーパーと病院でしょう」
恵子さんはそう話します。
購入したのは約65平方メートルの2LDK。戸建ては約3,600万円で売却し、新居の購入費や諸費用、リフォーム費用などに約3,000万円を充てました。
長女の仁美さん(仮名・47歳)は、最初に話を聞いたとき少し心配したといいます。
「今さら知らない土地へ行って、本当に大丈夫なの?」
夫婦は何度も現地に宿泊し、平日と休日の交通量やスーパーの品ぞろえ、病院までの移動手段も確認しました。
国土交通省『令和5年住生活総合調査』によると、住宅や居住環境で重要だと考える項目について、多くの家族類型で「日常の買物などの利便」が最も高くなっています。65歳以上の夫婦世帯でも、住まいそのものだけでなく、日常生活を支える周辺環境が重要になります。
住み替えに合わせ、夫婦は家具や荷物も大幅に減らしました。大きな食器棚や使わなくなったベッド、子どもたちが残していった荷物も整理します。
「持っていけないから捨てたというより、これから二人で使うかどうかで決めました」
引っ越しから半年ほどで、車も手放しました。
