フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」は、現在も多くの人を魅了しています。しかし、この作品を生んだ17世紀のオランダを理解するには、美術史だけでなく、当時の経済や商業の発展にも目を向ける必要があります。実は、現在の簿記会計で使われている複式簿記は、14~15世紀のイタリアで発展しました。そして、経済の中心がイタリアからオランダへ移っていくなかで、簿記の仕組みも変化していきました。フェルメールが生きた17世紀のオランダは、まさに経済・貿易が大きく発展した時代です。今回は、美術史ではなく簿記の歴史という視点から、「真珠の耳飾りの少女」が描かれた時代のオランダを眺めてみたいと思います。
商業の発展が生んだ複式簿記
ここで、簿記が登場します。現在、簿記会計で使用されている複式簿記は、14~15世紀のイタリアで発展しました。その背景には、当時のイタリア都市国家の活発な商業活動があります。
ベネチアやジェノバでは、イタリアと中東地域との地中海貿易が盛んに行われていました。銀などを輸出する一方、胡椒をはじめとする香辛料を輸入し、その交易によって大きな利益を得ていました。
また、フィレンツェでは金融業が発展しました。
こうした商業や金融の発展によって取引が複雑になれば、単純な収入と支出の記録だけでは経営状況を把握することが難しくなります。
そこで、一つの取引を二つの側面から記録する複式簿記が発展していきました。
現在の簿記でいう「借方」と「貸方」です。たとえば商品を現金で購入すれば、「商品が増えた」という側面と「現金が減った」という側面があります。一つの取引について、この二つの側面を同時に記録することで、取引の全体像を把握できるようになります。
複式簿記は、単なる記録方法ではありません。複雑化する商業活動を管理するための仕組みとして発展してきたのです。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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