「これを背負ったところを早く見たい」孫に選んだランドセル
「来年の入学祝い、ランドセルを買ってあげてもいい?」
由美子さん(仮名・64歳)が長男の浩平さん(仮名・37歳)に電話すると、少し間を置いてから返事がありました。
「ありがとう。でも、まだ本人と話しているところだから、決まったら連絡するよ」
由美子さんは5年前に夫を亡くし、現在は再雇用で事務の仕事をしています。長男は妻と6歳の娘、3歳の息子との4人暮らしです。
長男夫婦が住宅を購入した直後、妻が第2子を妊娠。育児休業で世帯収入が減ったことから、由美子さんは「下の子が保育園に入るまで」という約束で、月9万円の仕送りを始めました。
保育園には入れましたが、妻は時短勤務を続けています。住宅ローンや保育料もかかると聞き、仕送りは3年近く続いていました。
「お金の心配をせず、孫たちにいろいろ経験させてほしかったんです」
由美子さんは、仕送りとは別に、誕生日やクリスマスにも洋服や玩具を贈っていました。孫がプレゼントを開ける動画が送られてくるたび、何度も見返したといいます。
小学校入学を控えた孫娘には、特別な贈り物をしたいと考えました。店頭で見つけたのは、刺しゅうが入った淡い紫色のランドセル。価格は約9万円でした。
長男からの連絡を待つつもりでしたが、人気商品で残りが少ないと聞き、その場で購入しました。
「きっと喜ぶ」と思い、週末に長男宅へ届けることにしました。
しかし、箱を開けた孫娘は、一瞬だけ笑った後、母親の顔を見ました。
「ありがとう。でも、わたし、水色がよかったの」
長男の妻が「おばあちゃんが選んでくれたんだから」となだめると、浩平さんが遮りました。
「無理に喜ばせなくていいよ」
その場の空気が変わりました。由美子さんが「交換できるか聞いてみる」と答えると、浩平さんはランドセルの箱を閉じました。
「お母さん、もう仕送りもプレゼントもやめてほしい」
「どうして? 生活が大変だって言っていたじゃない」
由美子さんが聞き返すと、浩平さんは、これまで口にできなかった思いを打ち明けました。
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