フェルメールの代表作「真珠の耳飾りの少女」は、現在も多くの人を魅了しています。しかし、この作品を生んだ17世紀のオランダを理解するには、美術史だけでなく、当時の経済や商業の発展にも目を向ける必要があります。実は、現在の簿記会計で使われている複式簿記は、14~15世紀のイタリアで発展しました。そして、経済の中心がイタリアからオランダへ移っていくなかで、簿記の仕組みも変化していきました。フェルメールが生きた17世紀のオランダは、まさに経済・貿易が大きく発展した時代です。今回は、美術史ではなく簿記の歴史という視点から、「真珠の耳飾りの少女」が描かれた時代のオランダを眺めてみたいと思います。
フェルメールが生きた「オランダ黄金時代」
フェルメールは1632年に生まれ、1675年に亡くなりました。その生涯は、オランダが独立を確立し、ヨーロッパの経済・貿易の中心の一つとして発展していく時期と重なっています。
オランダは16世紀、当時支配していたスペインに反発して独立戦争を起こしました。そして1648年のウェストファリア条約によって、スペインからの独立が国際的に承認されました。
当時のオランダでは羊毛工業などの産業が盛んで、産業革命以前のイギリスを上回るほど経済的に発展していました。さらに海運や貿易も大きく発展し、17世紀には世界各地との交易を通じて大きな富を蓄積していきました。
この時代は、一般に「オランダ黄金時代」と呼ばれます。
そして、この経済的な繁栄は、社会のさまざまな分野に影響を与えました。商業が発展すれば、当然ながら取引の規模も拡大します。遠隔地との取引も増え、扱う商品も多様になります。商人にとっては、日々の取引を正確に記録し、自分がどれだけの財産を持ち、どれだけの利益を得ているのかを把握することが、これまで以上に重要になりました。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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