ロシアから欧州へ、そして欧州からロシアへ――。かつてキプロスは、ロシア企業や富裕層にとって、資金や投資を海外へ動かすための「窓」のような役割を果たしていました。低い法人税率や国際金融センターとしての機能を背景に、ロシア資本の重要な金融・投資拠点となっていたのです。しかし、2022年のウクライナ侵攻を境に、その関係は大きく変わりました。EU加盟国であるキプロスは、EUの対ロシア制裁を実施する側に立っています。それでも、過去に形成されたロシアとの金融・投資上の結び付きは、簡単には消えません。かつて「ロシアと欧州をつないだ窓」キプロスは、現在どのような役割を担っているのでしょうか。
ウクライナ侵攻で「窓」は閉じられた
しかし、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻によって、キプロスとロシアの関係は大きく変わりました。キプロスはEU加盟国として、EUの対ロシア制裁を実施する立場になったからです。
EUはロシアの銀行、企業、個人などに対する制裁を段階的に強化してきました。
2026年7月23日には、EU理事会が第21次対ロシア制裁パッケージを採択しました。この制裁パッケージでは、48人の個人と170の法人・団体が新たに制裁対象となったほか、ロシアの金融機関に対する取引禁止措置なども拡大されています。
さらに、第三国に拠点を置く金融機関や暗号資産関連サービスについても、制裁回避を防止するための措置が盛り込まれています。
つまり、かつてロシア資本が欧州へアクセスするための「窓」となったキプロスは、現在ではEUの対ロシア制裁を実施する側に立っているのです。
実際、ロシア人によるキプロスの銀行への預金は、2014年から2022年にかけて大きく減少しました。ロシア資本にとって、キプロスはもはや以前と同じ意味を持つ金融拠点ではありません。
「窓」は、事実上閉じられたといえるでしょう。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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