「今週末、また泊まりに」恒例になった長男一家の帰省
「最初は、孫が泊まりに来るのが楽しみだったんですよ」
そう話すのは、70歳の恵子さん(仮名)です。同い年の夫・正一さん(仮名)と、郊外の戸建てで暮らしています。
夫婦の年金収入は月約26万円。住宅ローンはすでに完済しています。
40歳の長男・裕介さん(仮名)は、妻と小学生の子ども2人との4人暮らし。実家までは車で1時間半ほどの距離です。
以前は正月やお盆などに帰ってくる程度でした。それが数年前から、少しずつ増えていきます。
「今週末、そっち行っていい?」
そんな連絡が入り、土曜日に来て1泊。やがて金曜日の夜に仕事を終えてから来て、日曜日の夕方まで過ごすことも増えました。
多いときには月2回、平均すれば月に1回ほどです。恵子さんも当初は喜んでいました。
孫が好きなハンバーグを作り、ジュースやお菓子を買っておく。客間に布団を4組敷き、翌朝には朝食を用意します。
土曜日の昼は外食することもありましたが、夕食と日曜日の朝食は自宅で食べるのが定番でした。
「息子は『何もしなくていいよ』と言うんです。でも、本当に何もしないわけにはいかないでしょう。冷蔵庫が空っぽのままというわけにもいかないですし」
いつの間にか、長男一家が来る前日の金曜日にはスーパーへ行くのが習慣になっていました。肉、魚、牛乳、パン、果物。孫用のお菓子も買います。
食費だけが問題だったわけではありません。
4人が泊まれば、バスタオルも増えます。使ったシーツや布団カバーを洗い、布団を干して押し入れに戻すのは、長男一家が帰った後です。
以前なら月曜日には普段通りに過ごしていました。ところが70歳になったころから、帰省翌日は何もする気になれず、午前中を休んで過ごすことが増えたといいます。
「日曜日の夕方にみんなが帰ると、ほっとする自分がいたんです。それで、『私、来るのを嫌がってるのかな』と少し嫌な気持ちになりました」
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、月平均の実収入は25万4,395円、可処分所得は22万1,544円、消費支出は26万3,979円。食料への支出も日々の家計で大きな割合を占めています。
ある日、恵子さんは夫に言いました。
「来月も来るって。今度は日帰りにしてもらおうかな」
正一さんは少し驚いたものの、「いいんじゃないか」と答えました。そこで恵子さんは初めて、自分が何に疲れていたのかを夫に話しました。
