「移民大国」だったアイルランドがなぜ経済大国に? 低い法人税率で外国企業を呼び込んだ税制の変遷【国際税務の専門家が解説】

「移民大国」だったアイルランドがなぜ経済大国に? 低い法人税率で外国企業を呼び込んだ税制の変遷【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつては経済的に厳しい状況が続き、米国などへ多くの移民を送り出したアイルランド。しかし現在では、1人当たりGDPで英国を上回る水準にまで経済成長を遂げています。その背景には、段階的な法人税率の引き下げや、EU加盟国としての立地を生かした外国資本の誘致があります。租税回避問題でも注目されたアイルランドの税制は、どのように変化してきたのでしょうか。

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「移民大国」だったアイルランド、英国を上回る経済水準に

2026年9月12日、トランプ大統領は訪問先のアイルランドの首都ダブリンで、英領北アイルランドの帰属問題に関して「アイルランドと統一するのを見たい」と述べ、アイルランドとの統一を支持する考えを示しました。政治家特有のリップサービス的な発言ともいえますが、英国はこれに反発しています。

 

古くは、アイルランド独立を背景にしたデビッド・リーン監督の『ライアンの娘』(1970年)、北アイルランド問題を扱った『パトリオット・ゲーム』(1992年)などの映画がありますが、恐らく大統領はこれらの作品には関心を示さないのではないでしょうか。

 

映画の話を続けると、ジョン・フォード監督の『静かなる男』(1952年)は、アイルランド系米国人を主人公とした作品です。この映画に主演した女優のモーリン・オハラはアイルランド出身です。

 

3月17日は「聖パトリックデー」と呼ばれ、米国ではアイルランド系の人々によるパレードが各地で行われます。アイルランドは長く経済的に厳しい状況が続いたため、米国へ多くの人々が移民として渡ったのです。ちなみに、ケネディ大統領の父親もアイルランドからの移民で、一代で財を成しました。

 

かつてのアイルランドは、隣国の英国と比べて経済的に豊かとはいえず、多くの人々が米国へ移民しました。しかし、現在のアイルランドは大きく変わっています。1人当たりGDPでは英国を上回る水準となっており、かつての経済状況からは大きな変化を遂げています。

法人税率を段階的に引き下げ、外国資本を積極的に誘致

アイルランドはEU加盟国であり、現在の法人税率は12.5%と比較的低い水準です。法人税率は段階的に引き下げられ、2000年1月以降は24%、2001年1月以降は20%、2003年1月以降は12.5%となりました。このような税率の引き下げを通じて、外国資本を誘致する租税政策が進められたのです。

 

こうした低い法人税率に加えてEU加盟国であることも外国企業から評価され、アイルランドはEU市場への入口としての役割を果たすようになりました。

 

低い法人税率によって海外から企業を呼び込み、その企業活動を通じて雇用や投資を拡大させるという政策は、アイルランド経済の大きな特徴となっています。

 

一方で、アイルランドの税制は、租税回避との関係でも注目されてきました。

 

次ページ「ダブルアイリッシュ・ダッチサンドイッチ」が示した租税回避問題

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